体外受精において、凍結していた胚盤胞などを移植した後は、食事内容に気を配る方が多いかもしれません。
しかし、過度に神経質になる必要はなく、基本的には栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
この記事では、胚移植後の食事で避けるべきものや、積極的に摂りたい栄養素、そして心の持ちようについて解説します。
胚移植後の食事は神経質になりすぎずバランスを意識することが基本
胚移植後の食事において、特定の食品を食べたことが直接的に着床の成否を決めるわけではありません。
最も重要なのは、特定の食品を過剰に避けたり摂取したりするのではなく、様々な食材をまんべんなく取り入れた栄養バランスの取れた食事を心がけることです。
栄養バランスの整った食事は、母体の健康状態を良好に保ち、胚が着床しやすい子宮環境を整えるための土台となります。
食事制限によるストレスは、かえって心身に良くない影響を与える可能性もあるため、「あれを食べてはいけない」と厳しく制限するのではなく、リラックスした気持ちで日々の食事を楽しむ姿勢が求められます。
【重要】胚移植後に避けるべき・摂取を控えたい食べ物と飲み物
胚移植後に食べてはいけないものはありますか?」という質問に対しては、明確に「絶対NG」とされるものは少ないものの、妊娠中と同様に避けるべき、あるいは摂取を控えたい食品や飲み物がいくつか存在します。
これらは着床への影響や、母体と胎児への感染症リスクを考慮したものです。
具体的にはアルコールやカフェイン、食中毒のリスクがある生もの、水銀を含む魚などが挙げられます。
飲酒は着床率への影響が懸念されるため控えましょう
アルコールは、着床率を低下させる可能性があると指摘されているため、胚移植後は摂取を控えるのが賢明です。
ある研究では、アルコールの摂取量が多いほど着床率や妊娠率が下がるという報告もあります。
また、妊娠が成立した場合、妊娠初期の飲酒は胎児の発育に悪影響を及ぼすリスクがあるため、判定日を待つ期間であっても禁酒することが推奨されます。
食事の際に飲み物が欲しくなった場合は、ノンアルコールビールや炭酸水などを活用して気分転換を図ると良いでしょう。
お酒以外の食べ物や飲み物でリラックスできる方法を見つけることも一つの方法です。
コーヒーや紅茶などカフェインの過剰摂取は避けましょう
コーヒーや紅茶、緑茶などに含まれるカフェインは、過剰に摂取すると血管を収縮させる作用があり、子宮への血流を低下させる可能性が懸念されます。
子宮の血流は、着床環境を整える上で重要な要素の一つです。
そのため、1日のカフェイン摂取量は200mg〜300mg程度(コーヒーなら1〜2杯)を目安にし、それ以上の摂取は避けるようにしましょう。
カフェインはエナジードリンクやチョコレートなどにも含まれているため注意が必要です。
リラックスしたい時には、ルイボスティーや麦茶、ハーブティーといったノンカフェインの温かい飲み物を選ぶと、体も温まりやすくなります。
食中毒のリスクがある生肉・生魚・生卵は注意が必要です
不妊治療中は、心身のストレスなどから免疫力が低下することもあります。
そのため、食中毒には普段以上に注意が必要です。
特に、生肉や加熱不十分な肉に含まれるトキソプラズマや、ナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモンなどに潜むリステリア菌は、妊娠中に感染すると胎児に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを避けるため、胚移植後は肉や魚、卵などの食材は中心部まで十分に加熱してから食べることが重要です。
お寿司や刺身、卵かけご飯なども、この大切な時期は念のため控えるのが安心です。
水銀を含む可能性のあるマグロなどの大型魚は摂取量に気を付けましょう
魚は良質なたんぱく質やDHAなどを含み、積極的に摂りたい食材ですが、一部の大型魚には注意が必要です。
マグロやカジキ、キンメダイといった食物連鎖の上位に位置する魚は、自然界に存在する水銀を体内に蓄積しやすい傾向があります。
水銀は胎児の神経系の発達に影響を与える可能性があるため、厚生労働省からも妊娠中の女性に対して摂取量への注意喚起がなされています。
完全に禁止する必要はありませんが、クロマグロやメバチマグロなどは週に1回、80g程度までを目安にしましょう。
アジ、サバ、イワシ、サンマなどの青魚は水銀のリスクが低く、安心して食べられます。
体を冷やさないために気を付けたい食事のポイント
東洋医学では「冷えは万病のもと」と言われ、特に妊活において体の冷えは子宮の血流を悪化させ、着床しにくい環境につながると考えられています。
体を冷やさないためには、物理的に冷たい食べ物や飲み物を避けるだけでなく、食材そのものが持つ性質にも目を向けることが大切です。
ここでは、体を温め、着床をサポートするための食事のポイントを具体的に紹介します。
アイスクリームや氷入りの冷たい飲み物は内臓を冷やす原因に
氷をたくさん入れた飲み物やアイスクリーム、冷蔵庫で冷やした食べ物などを摂取すると、直接的に胃腸などの内臓を冷やしてしまいます。
内臓の温度が下がると、消化機能が低下するだけでなく、全身の血行が悪化しやすくなります。
子宮や卵巣周辺の血流も滞り、着床にとって最適なふかふかのベッド(子宮内膜)を準備する妨げになる可能性があります。
移植後の大切な時期は、できるだけ常温以上の飲み物を選び、食事も温かいスープや煮物などを取り入れるように心がけましょう。
体を内側から温める意識が、着床しやすい環境づくりをサポートします。
血糖値を乱高下させる甘いお菓子やジュースの摂りすぎに注意
白砂糖を多く含むケーキやチョコレート、清涼飲料水などを摂取すると、血糖値が急激に上昇し、その後インスリンの働きで急降下する「血糖値スパイク」を引き起こします。
このような血糖値の乱高下は、自律神経やホルモンバランスの乱れにつながる可能性があり、着床を維持するための体内の環境に影響を与えかねません。
甘いものが食べたくなった時は、急激な血糖値上昇を招きにくい果物やドライフルーツ、食物繊維が豊富なさつまいもなどを選ぶのがおすすめです。
間食を上手にコントロールし、血糖値を安定させることが、心身のコンディションを整えることにもつながります。
体を冷やす性質を持つ夏野菜の食べ過ぎは避けましょう
東洋医学の考え方では、食材には体を温める「陽性」の性質と、冷やす「陰性」の性質があると考えられています。
きゅうり、トマト、なす、レタスといった夏が旬の野菜や、南国で採れる果物は、体にこもった熱を冷ます「陰性」の性質を持つとされます。
これらの食材には水分が多く含まれているため、摂りすぎると体を内側から冷やしてしまう可能性があります。
全く食べてはいけないわけではありませんが、生で大量に食べるのは避け、スープや炒め物にするなど加熱調理を加えたり、体を温める作用のある生姜やネギなどの薬味と一緒に摂ったりする工夫をすると、性質が緩和されます。
着床をサポートするために積極的に摂りたい栄養素と食材
胚移植後は、着床しやすい体づくりのために積極的に摂りたい栄養素や食材もあります。
体を内側から温めて血行を促進するものや、妊娠初期に特に必要となる栄養素を意識することが重要です。
バランスの取れた食事を基本としながら、子宮環境を整える助けとなる食材を日々の食事にプラスしていきましょう。
血行促進を助ける生姜や根菜など体を温める食材を摂り入れよう
子宮への血流を豊かに保つことは、着床しやすい子宮内膜を育む上で非常に重要です。
食事によって体を内側から温め、血行を促進しましょう。
代表的な食材としては、辛み成分に血行促進作用がある生姜やニンニク、ネギなどが挙げられます。
また、土の中で育つごぼう、にんじん、れんこんなどの根菜類も体を温める性質を持つとされています。
これらの食材を味噌汁やスープ、煮物といった温かい料理で取り入れるのが効果的です。
さらに、血行を良くするビタミンEが豊富なナッツ類、アボカド、かぼちゃなども意識して食事に加えると良いでしょう。
基本は栄養バランスの整った和食中心の食生活を心がける
特定の食材ばかりを食べるのではなく、多品目の食材をバランス良く摂取することが健康な体づくりの基本です。
その点、日本の伝統的な「一汁三菜」を基本とする和食は、理想的な食事スタイルと言えます。主食のごはん、たんぱく質源となる主菜(魚・肉・卵・大豆製品)、ビタミンやミネラルを補う副菜(野菜・きのこ・海藻類)、そして発酵食品である味噌を使った汁物が揃うことで、自然と栄養バランスが整います。特に納豆や味噌などの発酵食品は、腸内環境を改善し、免疫力を高める効果も期待できます。胚移植後は、こうした和食中心の食生活を意識することをおすすめします。
妊娠初期に必要な葉酸やビタミンDを意識して摂取する
葉酸は胎児の脳や脊髄の発達に不可欠な栄養素であり、特に神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、妊活中から妊娠初期にかけての積極的な摂取が推奨されています。
ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、枝豆、納豆、レバーなどに多く含まれています。
近年注目されているのがビタミンDです。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるだけでなく、着床しやすい子宮内膜の環境づくりや、免疫機能を調整する働きがあると考えられています。
鮭やいわしなどの魚類や、きのこ類に豊富に含まれるほか、日光を浴びることで体内でも生成されるため、適度な散歩も効果的です。
食べ物より大切なこと|ストレスを溜めずにリラックスして過ごそう
胚移植後の食事管理は大切ですが、それ以上に重要なのがストレスを溜めずに心穏やかに過ごすことです。
食事内容を気にするあまり食事が楽しめなくなったり、自分を追い詰めてしまったりするのは本末転倒です。
心の状態は体の状態に密接に関わっており、リラックスしている時の方が血行も良くなり、ホルモンバランスも整いやすいと言われています。
心身ともに穏やかな状態を保つことが、着床をサポートする最良の環境となります。
「これを食べたからダメだった」と自分を責めない心構え
胚移植後の結果は食事内容一つで決まるものではありません。
着床が成立するかどうかは、受精卵の生命力や子宮の状態、ホルモン環境など、様々な要因が複雑に絡み合って決まります。
そのため、もし思うような結果が得られなかったとしても、「あの時あれを食べたからだめだったのかもしれない」と食事を原因にして自分を責めるのはやめましょう。
完璧な食事をすることよりも、自分自身を労わり、穏やかな気持ちで判定日までの時間を過ごすことの方が、体にとってはるかに良い影響を与えます。
努力している自分を認め、優しい気持ちで過ごしてください。
食べたいものを過度に我慢してストレスを溜めるのは逆効果
健康に良いとされる食事を心がけることは大切ですが、「絶対にこれを食べてはいけない」と厳しく我慢しすぎると、かえってそれが大きなストレスになることがあります。
ストレスを感じると、体はストレスホルモンであるコルチゾールを分泌します。
コルチゾールは血管を収縮させたり、ホルモンバランスを乱したりする作用があるため、過剰なストレスは着床環境にとってマイナスに働く可能性があります。
たまには好きなものを少しだけ食べるなど、自分を甘やかす日を作るのも一つの方法です。
食事が義務や苦痛にならず、楽しい時間となるように工夫することが重要です。
パートナーと楽しい食事の時間を過ごすことが心の栄養になる
胚移植後の不安な時期は、一人で抱え込まずにパートナーと気持ちを分かち合うことが大切です。
食事の時間は、栄養補給だけでなく、コミュニケーションの絶好の機会にもなります。
その日の出来事を話したり、たわいもない会話で笑い合ったりすることで、心が安らぎ、リラックスできます。
二人で一緒に料理をしたり、体に優しいメニューがあるレストランで外食を楽しんだりするのも良いでしょう。
このように、食事の時間をパートナーと共に過ごす楽しいイベントにすることで、心の栄養も満たされ、不安な気持ちが和らぎ、ポジティブな気持ちで過ごすことにつながります。
胚移植後の食事に関するよくある質問
胚移植後の食事について、多くの方が抱く具体的な疑問にお答えします。
日常生活の中で遭遇しやすい外食の際のメニュー選びや、サプリメントの利用、コンビニ食との付き合い方など、日々の食事管理の参考になる情報を取り上げます。
過度に神経質になる必要はありませんが、いくつかのポイントを知っておくことで、より安心して過ごせるようになります。
移植後に外食の予定がある場合、どんなメニューを選べば良いですか?
生ものを避け、野菜が多く、栄養バランスの取れた定食スタイルのメニューを選びましょう。
具体的には、魚の塩焼きや煮魚定食、具沢山のスープや蒸し料理がおすすめです。
体を冷やす冷たいメニューや、香辛料が強い刺激的な料理は避けた方が無難です。
お店選びに迷ったら、品数が多く、栄養バランスを考えやすい和食レストランなどを選ぶと良いでしょう。
葉酸以外のサプリメントは自己判断で飲んでも問題ありませんか?
自己判断での摂取は避け、必ずかかりつけの医師に相談してください。
サプリメントの中には、特定の成分の過剰摂取が体に悪影響を及ぼすものや、処方されている薬との相互作用が懸念されるものもあります。
安全に不妊治療を進めるためにも、摂取したいサプリメントがある場合は、その必要性や種類、摂取量について医師の指示を仰ぐことが重要です。
コンビニ食やインスタント食品は絶対に食べてはいけませんか?
絶対に食べてはいけないわけではありませんが、日常的に利用するのは避けましょう。
コンビニ食やインスタント食品は、塩分や糖分、脂質、食品添加物が多く含まれる傾向があり、栄養バランスが偏りがちです。
どうしても利用する際は、サラダやゆで卵、ヨーグルト、具沢山の味噌汁などをプラスして、野菜やたんぱく質、ミネラルを補う工夫をすると良いでしょう。
まとめ:胚移植後はリラックスしてバランスの良い食事を心がけよう
胚移植後の食事では、特定の食品を厳格に禁止するよりも、多様な食材を取り入れた栄養バランスの良い食事を基本とすることが重要です。
アルコールやカフェインの過剰摂取、食中毒のリスクがある生ものは避け、体を温める食材を意識的に取り入れることで、着床に適した体内環境を整えるサポートができます。しかし、食事制限がストレスになっては逆効果です。
最も大切なのは、自分を責めずにリラックスして過ごすこと。心身ともに穏やかな状態を保ち、日々の食事を楽しみながら、ゆったりとした気持ちで判定の日を迎えることが望まれます。








