体外受精において良好な胚を移植しても、着床しない、あるいは流産を繰り返す状態は、精神的にも身体的にも大きな負担となります。
この記事では、反復着床不全や反復流産(不育症)に悩む方に向けて、その原因として考えられる医学的要因、原因を特定するための最新の検査、そして次の移植に向けた具体的な治療法について詳しく解説します。
良好な胚を移植しても妊娠・出産に至らない方へ
反復着床不全や不育症とは、見た目が良好な受精卵を複数回移植しても妊娠に至らない、または妊娠は成立するものの流産を繰り返してしまう状態を指します。
これらの原因は一つではなく、受精卵側の要因、子宮環境、免疫、血液凝固系など多岐にわたります。
原因を特定し、それぞれに合った対策を講じることが、次回の妊娠・出産へとつながる重要な鍵となります。
あなたの状況はどっち?反復着床不全と不育症(反復流産)の違い
反復着床不全とは、体外受精で良好と判断された胚を複数回移植しても、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が検出されず、一度も妊娠反応が陽性にならない状態を指します。
一方、不育症(反復流産)は、妊娠反応は陽性になるものの、超音波検査で胎嚢が確認される前後の化学流産や、胎嚢確認後の臨床的流産を繰り返す状態です。
両者は着床が成立するか否かで区別されますが、慢性子宮内膜炎や免疫異常など、原因が共通している場合も少なくありません。
そのため、両方の可能性を視野に入れて検査や治療を進めることが重要になります。
何回繰り返したら?反復着床不全・不育症の医学的な定義
反復着床不全の明確な定義は確立していませんが、一般的には「形態良好な胚を3回以上、もしくは4個以上移植しても臨床的妊娠に至らない場合」に診断されることが多いです。
一方、不育症は「2回以上の流産・死産を繰り返した場合」と定義されています。
ただし、これらの回数はあくまで目安であり、患者の年齢や背景を考慮して、より早い段階で精密検査を推奨する医療機関も増えています。
自身の状況が該当するかどうか、まずは主治医に相談することが第一歩となります。
なぜ着床しない?考えられる反復着床不全・不育症の主な原因
妊娠・出産に至らない背景には、様々な原因が複雑に絡み合っている可能性があります。
主な原因は受精卵の染色体異常とされていますが、それだけではなく、母体側の子宮内環境や免疫機能、血液凝固機能の障害など、多角的な視点から原因を探る必要があります。
ここでは、考えられる主な原因を項目別に解説します。
原因の多くを占める受精卵の染色体異常
反復着床不全や早期流産の原因として最も頻度が高いのは、受精卵の染色体異常です。
これは染色体の本数が多かったり少なかったりする状態で、受精卵の成長を妨げる要因となります。
染色体異常の発生率は女性の加齢とともに上昇する傾向があり、見た目が良好な胚であっても、内部に染色体の障害を抱えている可能性は否定できません。
この問題は、着床そのものが成立しない、あるいは着床しても早い段階で発育が停止する直接的な原因となります。
ご夫婦のいずれかに隠れている染色体異常
受精卵だけでなく、ご夫婦のどちらかが染色体の構造に異常を持っている場合も、反復流産や着床不全の原因となります。 ご自身は健康であっても、無症状のまま染色体の構造がわずかに異なっているケースは少なくありません。 この染色体の特徴が受精卵に引き継がれると、一定の確率で流産を引き起こしたり、着床の発育が途中で止まったりすることがあります。 これまで原因不明とされてきたケースの中に、こうしたご夫婦側の染色体異常が潜んでいる可能性が指摘されています。
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【子宮側の問題①】着床を妨げる慢性子宮内膜炎の可能性
慢性子宮内膜炎は、子宮内膜に持続的な炎症が生じている状態で、自覚症状がほとんどないため気づかれにくいのが特徴です。
細菌感染などが原因で起こり、免疫細胞が活性化することで、受精卵を受け入れるべき子宮内膜が着床しにくい環境になってしまいます。
この炎症による着床環境の障害は、受精卵が子宮内膜に接着し、内部に侵入するプロセスを妨げるため、反復着床不全の一因と考えられています。
子宮鏡検査や組織検査によって診断が可能です。
【子宮側の問題②】妊娠率に影響する子宮内フローラの乱れ
子宮内には様々な細菌が存在し、その集合体である「子宮内フローラ」のバランスが妊娠の成否に影響を与えることがわかってきました。
特に、ラクトバチルス属の善玉菌が90%以上を占める状態が着床に適しているとされます。
このバランスが崩れ、悪玉菌が増加すると、子宮内膜の免疫環境に変化が生じ、受精卵の着床に障害をきたしたり、流産のリスクを高めたりする可能性があります。
子宮内フローラの乱れは、慢性子宮内膜炎の原因となることもあります。
【子宮側の問題③】移植タイミングがずれる「着床の窓」
子宮内膜が受精卵を受け入れることができる期間は「着床の窓(Window of Implantation: WOI)」と呼ばれ、通常は排卵後5日目を中心とした数日間に限定されています。
しかし、この着床の窓のタイミングには個人差があり、一般的な移植時期とずれている場合があります。
どれだけ良好な胚を移植しても、子宮内膜に受け入れ準備ができていなければ着床には至りません。
このタイミングのずれが、これまで原因不明とされてきた着床障害の一因である可能性が指摘されています。
【子宮側の問題④】着床スペースを狭める子宮の形態異常
子宮奇形をはじめとする子宮の形態異常も、妊娠の成立や継続を妨げる要因の一つです。 子宮腔と呼ばれる胎児を育てるスペースが変形していると、受精卵が着床する場所が狭くなったり、着床部位への血流が不十分になったりする傾向があります。 これにより、着床そのものが阻害されるだけでなく、妊娠できたとしても胎児の成長に悪影響を及ぼし、流産を引き起こしやすくなります。 超音波検査や子宮卵管造影などの画像診断によって、子宮の形を詳しく調べることが原因究明に役立ちます。
【内分泌系の問題】流産リスクに影響する甲状腺機能の異常
甲状腺ホルモンは、妊娠の成立や維持に重要な役割を果たしており、その機能に異常があると不育症の原因となります。 甲状腺ホルモンの分泌が多すぎても少なすぎても、着床障害や流産のリスクが上昇することがわかっています。 また、流産だけでなく、その後の妊娠経過や出産後の母体の健康にも影響を及ぼすため、早期の発見と管理が欠かせません。 甲状腺機能の異常は自覚症状が現れにくいことも多く、血液検査によってホルモン数値を正確に把握することが重要視されています。
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【栄養素の問題】着床環境を悪化させる特定のビタミンやミネラルの不足
近年、着床環境を整える上で、特定の栄養素が大きな役割を担っていることが明らかになってきました。 特にビタミンDは、子宮内膜の環境を良好に保ち、免疫バランスを整える働きがあり、不足すると初期流産のリスクが上昇すると言われています。 さらに、細胞分裂を促す亜鉛が不足し、代わりに着床を阻害する銅が体内に蓄積されると、子宮内環境が悪化しやすくなります。 現代の食生活や日光を浴びる機会の減少によって、これらの栄養素が不足している女性は多く、反復着床不全の隠れた原因として注目されています。
【免疫系の問題】受精卵を攻撃してしまう免疫の過剰反応
受精卵は半分が父親由来であるため、母体にとっては異物ともいえます。
通常、母体の免疫システムは受精卵を攻撃しない「免疫寛容」という状態になりますが、この仕組みに障害が生じると、受精卵を異物と認識して攻撃してしまうことがあります。
例えば、受精卵を攻撃するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性が高まりすぎたり、攻撃を促すTh1細胞が優位になったりすると、着床が妨げられたり、妊娠が維持できなくなったりする原因となります。
【血液凝固系の問題】血流を滞らせる血栓ができやすい体質
血液が固まりやすくなる体質(血液凝固能亢進)も、不育症の要因の一つです。
代表的なものに抗リン脂質抗体症候群があり、この体質を持つ場合、胎盤を形成する血管内に微小な血栓ができやすくなります。
血栓によって胎盤の血流に障害が生じると、胎児へ十分な酸素や栄養が供給されなくなり、発育不全や流産・死産を引き起こすリスクが高まります。
この問題は、特に妊娠が成立した後の継続に関わる重要な要因と考えられています。
原因特定への第一歩|反復着床不全・不育症の精密検査
これまで原因がわからなかった着床や妊娠継続の問題を解決するためには、より専門的な精密検査によって原因を特定することが最初のステップです。
受精卵自体の問題、子宮内の着床環境、免疫や血液凝固のバランスなど、様々な角度から体を調べることで、次の治療方針を立てるための重要な手がかりを得ることができます。
【受精卵】染色体数を調べる着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)
着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)は、体外受精で得られた胚盤胞の細胞の一部を採取し、移植前に染色体の本数に異常がないかを調べる検査です。
染色体数が正常な胚(正倍数性胚)を選んで移植することで、染色体異常が原因となる着床不全や流産を回避し、妊娠率の向上と流産率の低下が期待されます。
特に、女性の年齢が高い場合や、流産を繰り返している場合に有効な選択肢の一つと考えられています。
この検査は、現在、先進医療として実施されています。
【流産検体】流産組織を用いて胎児の染色体を調べる絨毛検査
妊娠初期の流産を繰り返す場合、流産手術の際に採取した胎児の組織や胎盤の一部である絨毛を用いて染色体を調べる検査が行われます。 この検査により、流産の原因が胎児側の偶発的な染色体異常だったのか、それ以外の母体側の要因が疑われるのかを切り分けることができます。 解析には新鮮な組織が必要となるため、流産手術の直後に検体を採取するのが一般的です。 近年では、先進医療として自然排出した検体からでもDNAを抽出して検査できる技術も普及しており、不育症の原因究明に大きく貢献しています。
【ご夫婦】血液からダウン症などの染色体異常を調べるG分染法
ご夫婦のどちらかに流産を引き起こす染色体の要因がないかを確認するため、血液を用いた染色体検査が実施されます。 標準的な検査として用いられるG分染法は、染色体に特殊な処理をして縞模様を浮かび上がらせ、全体の数や構造を観察する方法です。 この検査では、ダウン症候群などに代表される染色体の数的異常や、構造の欠失、転座などを詳しく調べることが可能です。 検査結果は今後の治療方針を決める上で重要な判断材料となり、必要に応じて専門的な遺伝カウンセリングへと引き継がれます。
【子宮内環境】ERA・EMMA・ALICE検査で着床環境を総合的に評価
ERA、EMMA、ALICEは、いずれも子宮内膜の組織を採取して行う精密検査です。
ERA(子宮内膜着床能検査)は、遺伝子レベルで「着床の窓」のタイミングがずれていないかを調べます。
EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)は子宮内フローラの細菌バランスを評価し、ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)は慢性子宮内膜炎の原因となる細菌の有無を特定します。
これらの検査を組み合わせることで、子宮内の着床環境を多角的に評価し、個別化された移植計画を立てることが可能になります。
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【免疫】NK細胞活性やTh1/Th2比で免疫寛容の状態をチェック
母体の免疫機能が受精卵を攻撃していないかを確認するため、血液を用いた免疫系の検査が行われます。
具体的には、受精卵を攻撃するNK細胞の活性度を測定する検査や、免疫の攻撃性を司るTh1細胞と、妊娠維持に働くTh2細胞のバランスを調べるTh1/Th2比検査などがあります。
これらの検査で免疫寛容の状態に問題が見つかった場合、免疫抑制剤などを用いた治療を検討することになります。
この検査は、原因不明の反復着床不全や不育症の原因を探る上で重要です。
【血液凝固】不育症に関連する凝固因子を調べる血液検査
不育症のリスク因子として知られる血液凝固系の異常を調べるため、血液検査が実施されることがあります。この検査では、抗リン脂質抗体の有無などを調べます。これらの検査で異常が見つかった場合、血栓の形成を予防する治療を行うことで、流産のリスクを低減させることが期待できる場合があります。
この検査は、特に流産を繰り返す場合に検討されることがあります。
【内分泌・栄養素】甲状腺機能やビタミンなどの血中濃度検査
内分泌系の異常や栄養素の不足を評価するため、血液中の甲状腺ホルモンやビタミン・ミネラルの数値を詳しく調べる検査が行われます。 甲状腺刺激ホルモンなどの数値を測定し、甲状腺機能が妊娠に適した状態であるかを確認します。 同時に、着床環境に影響を与える血中のビタミンD濃度や、妊娠に不可欠な亜鉛と着床を阻害する銅のバランスも調べます。 これらの数値が妊娠に理想的な基準に達しているかを判定することで、今後の治療方針やサプリメントの必要性を判断する重要な手がかりとなります。
次の移植に向けて|原因別に行う最新の治療アプローチ
精密検査によって原因が明らかになった、あるいは原因が推測された場合、その結果に基づいて具体的な治療法を選択します。
受精卵の選択から、子宮内環境の改善、免疫や血液凝固系の調整まで、原因に応じた個別化されたアプローチが、次回の妊娠・出産成功の可能性を高めます。
ここでは、代表的な最新の治療法を紹介します。
PGT-Aで染色体数が正常な胚を選んで移植する
PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)で染色体数が正常であると判断された胚(正倍数性胚)のみを移植する方法は、染色体異常に起因する着床不全や流産に対する直接的な治療アプローチです。
この治療により、染色体異常のある胚の移植を避けられるため、移植あたりの妊娠率が向上し、流産率が低下します。
結果として、妊娠に至るまでの時間短縮も期待できるため、特に高年齢の方や流産を繰り返す方にとって有効な選択肢となります。
流産検体の検査結果に基づく適切な遺伝カウンセリング
流産検体やご夫婦の染色体検査によって特定の染色体異常が判明した場合、専門医による遺伝カウンセリングが提供されます。 ご夫婦に対して検査結果の意味や、次回の妊娠における流産率、健康な赤ちゃんを出産できる可能性などについて詳しい説明が行われます。 遺伝的な背景を正しく理解した上で、PGT-Aを含む今後の治療方針をどう進めていくかを、医療者と共にじっくりと話し合います。 不安や喪失感を抱えるご夫婦を精神的にもサポートし、後悔のない選択ができるよう支援する重要なプロセスです。
慢性子宮内膜炎を抗生剤で治療する
子宮鏡検査や組織検査(CD138免疫染色)によって慢性子宮内膜炎と診断された場合は、抗生剤による治療が第一選択となります。
一般的には、ドキシサイクリン(ビブラマイシンなど)といった抗生物質を一定期間服用します。
治療後には再度検査を行い、炎症が改善していることを確認してから胚移植に進むのが一般的です。
この治療によって子宮内膜の着床環境が正常化し、妊娠率の向上が報告されています。
自覚症状がないため、検査を受けて初めてわかることが多い病態です。
子宮の形態異常に対する外科的な手術療法
検査によって子宮奇形などの明らかな形態異常が見つかり、それが着床不全や流産の原因であると診断された場合は、手術による治療が検討されます。 子宮鏡を用いた日帰り手術などで、子宮内のスペースを正常な形に近づける処置が行われます。 着床の妨げとなっている物理的な要因を取り除くことで、受精卵が着床しやすい環境が整い、妊娠の継続率が高まります。 手術の適応となるかは形態異常の種類や程度によって異なるため、担当医と慎重に相談して決定します。
専門医との連携で行う甲状腺機能異常の治療
甲状腺機能の異常が不育症の原因と判断された場合は、速やかにホルモン数値を正常化する治療が開始されます。 生殖医療の担当医と甲状腺疾患の専門医が連携し、主に内服薬を用いてホルモンの分泌量をコントロールします。 妊娠前から数値を安定させ、妊娠成立後も継続して薬を服用することで、流産のリスクを大幅に下げることが可能です。 定期的な血液検査で薬の量を細かく調整しながら、母子ともに安全な妊娠期間を過ごせるよう慎重に管理が行われます。
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ラクトフェリンや乳酸菌で子宮内フローラを整える
EMMA検査の結果、子宮内フローラのバランスが乱れており、ラクトバチルス属菌が少ないと判断された場合、その改善を目指す治療が行われます。
具体的には、ラクトバチルス属菌を増やす働きのあるラクトフェリンの経口サプリメントや、乳酸菌を含む膣錠などが用いられます。
これらの治療により、子宮内の細菌環境を整え、善玉菌が優位な状態にすることで、受精卵が着床しやすい環境を作り出し、妊娠率や生児獲得率の向上が期待されます。
サプリメントを用いて不足した栄養素を補充する治療
血液検査でビタミンDの不足や、亜鉛と銅のバランスの乱れが確認された場合は、サプリメントを用いた補充療法が行われます。 ビタミンDのサプリメントを日常的に摂取することで、子宮内膜の免疫環境が改善し、着床しやすい状態へと導かれます。 また、亜鉛を積極的に補給することで、着床を阻害する銅の過剰な吸収が抑えられ、受精卵の発育に欠かせない体内環境が整います。 食事療法だけでは十分な量を維持することが難しいため、医療機関で処方される専用のサプリメントを活用するのが一般的です。
最適なタイミングで胚移植を行うための個別化移植
ERA検査によって「着床の窓」にずれが見つかった場合、その結果に基づいて胚移植のタイミングを個別化する治療を行います。
例えば、検査結果が「12時間早い」と出た場合は、次回の移植周期で黄体ホルモンの補充開始時間を12時間遅らせるなど、最適な時期に合わせて移植日を調整します。
これにより、胚と子宮内膜の着床準備のタイミングを正確に同期させることが可能となり、これまでタイミングのずれによって着床に至らなかったケースでの妊娠率向上が期待される治療法です。
過剰な免疫反応を抑えるタクロリムスなどの免疫抑制療法
免疫系の検査でTh1/Th2比が高いなど、母体による受精卵への免疫学的な拒絶反応が疑われる場合、免疫の働きを穏やかにする治療が検討されます。
代表的な治療薬として、臓器移植の際に拒絶反応を抑えるために使われるタクロリムス(プログラフ)などの免疫抑制剤があります。
胚移植の周期に合わせて内服することで、過剰な免疫反応を抑制し、受精卵が着床・発育しやすい状態を目指します。
医師の厳密な管理のもとで行われる専門的な治療です。
血栓を予防する低用量アスピリンやヘパリンを用いた抗凝固療法
抗リン脂質抗体症候群などの血液凝固異常が原因で不育症となっている場合、胎盤の血流を改善し血栓の形成を予防する抗凝固療法が行われます。
一般的に、低用量アスピリンの内服と、ヘパリンの自己注射を組み合わせて行う治療が標準的です。
妊娠が判明した時点、あるいは胚移植の周期から開始し、妊娠中期から後期まで継続します。
この治療により、胎盤機能の維持を図り、流産のリスクを大幅に低減させることが可能です。
反復着床不全・反復流産(不育症)に関するよくある質問
反復着床不全や不育症に関して、これまで様々な原因や検査、治療について解説してきました。
ここでは、患者が特に抱きやすい疑問点について、Q&A形式で簡潔に回答します。
検査によって原因が必ずしも全て特定されるわけではないこと、治療の成功率は個々の状態や原因によって異なること、そして費用の問題など、具体的な疑問を解消するための一助としてください。
Q1.検査をすれば、必ず原因はわかりますか?
必ずしも原因が特定できるとは限りません。
精密な検査を行っても、約半数の方は原因が特定できない「原因不明」と診断されます。
しかし、これまで見過ごされてきた問題点が検査によって明らかになることも多く、次の治療方針を決定する上で重要な情報を得ることができます。
Q2.PGT-Aで正常胚を移植すれば、100%妊娠できますか?
100%妊娠できるわけではありません。
PGT-Aは染色体異常による流産を減らし、妊娠率を高める有効な治療ですが、着床には子宮内環境など他の多くの要因も関わります。
正常胚を移植しても、妊娠に至らない可能性や、別の原因で流産する可能性は残ります。
Q3.これらの検査や治療は保険適用になりますか?
多くは保険適用外(自費診療)となります。
不育症に関する一部の検査やヘパリン療法などは保険適用ですが、反復着床不全に対するPGT-A(先進医療A)、ERA・EMMA・ALICE検査、免疫抑制療法などの専門的な検査・治療は、自費診療となるのが現状です。
まとめ
反復着床不全や反復流産(不育症)は、単一の原因ではなく、受精卵、子宮、免疫、血液凝固系など、複数の要因が複雑に関与していることが少なくありません。
そのため、見た目が良好な胚を移植するだけでは、必ずしも良い結果につながるとは限らないのが現状です。
原因を特定するためには、PGT-Aや子宮内環境検査といった専門的な精密検査が有効な手段となります。
そして、検査によって明らかになった個々の原因に対し、抗生剤治療や個別化移植、免疫療法といった最適な治療アプローチを選択することが、妊娠・出産への道を拓く鍵となります。
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