妊娠中の性行為について、特にその頻度が「毎日」となると、赤ちゃんと妊婦自身の体への影響が気になるものです。
多くのカップルが、パートナーシップを維持したい気持ちと、安全性を確保したいという思いの間で悩んでいます。
この記事では、特に体調が変化しやすい妊娠初期における性行為について、医学的な観点からの留意点、注意すべきポイント、そして安全に行うための具体的なルールについて解説します。
【結論】経過が順調なら妊娠中の毎日の性行為は問題ない
妊娠の経過が順調で、医師から特に安静の指示が出ていなければ、毎日の性行為が直接的な問題を引き起こすことはないとされています。
これは妊娠初期の7週目や、安定期に入る5ヶ月以降など、特定の時期に限った話ではありません。
大切なのは、回数そのものよりも、妊婦の体調や気持ちを最優先し、感染症対策などのルールを守ることです。
少しでも体調に変化を感じた場合は、無理をせず休む判断が求められます。
ただし「体調が良い」「感染症対策」などの条件を守ることが大前提
毎日の性行為が可能であっても、それはいくつかの条件を満たしている場合に限られます。
まず、妊婦本人の体調が良いことが絶対条件です。
つわりや腹痛、倦怠感があるときは避けましょう。
また、性行為によって子宮が収縮し、お腹が張ったり痛いと感じたりすることがあります。
そのような兆候が見られたら、すぐに中断して安静にしてください。
さらに、妊娠中は免疫力が低下し感染症にかかりやすくなるため、コンドームを必ず使用し、細菌感染のリスクを避けることが重要です。
これらの条件を守り、母子の安全を第一に考える必要があります。
少しでも不安やストレスを感じる場合は無理をしないことが大切
医学的に問題がないとされていても、妊婦自身が性行為に対して少しでも不安や恐怖、ストレスを感じる場合は、無理に行うべきではありません。
精神的なストレスは、ホルモンバランスの乱れや血行不良につながり、母体や胎児に間接的な影響を与える可能性も指摘されています。
パートナーとの関係を大切に思う気持ちも分かりますが、妊娠期間中は体の変化だけでなく、心の変化も大きい時期です。
自分の気持ちに正直になり、今は性行為をしたくないと感じるのであれば、その意思を尊重することが最も大切です。
毎日の性行為が赤ちゃんに与える影響は?知っておきたい2つのリスク
妊娠中の性行為の頻度について考えるとき、最も気になるのはお腹の赤ちゃんへの影響です。
多くの人が「挿入による衝撃が直接赤ちゃんに届いてしまうのではないか」と心配しますが、実際にはその心配はほとんどありません。
しかし、注意すべきリスクが全くないわけではありません。
主に「子宮収縮」と「細菌感染」という2つのリスクについて正しく理解し、適切な対策を講じることが、安全なマタニティライフにつながります。
挿入による物理的な衝撃が直接赤ちゃんに届く心配はない
性行為による挿入の動きや振動が、直接赤ちゃんに物理的なダメージを与える心配は基本的にありません。
なぜなら、赤ちゃんは子宮頸管や卵膜、そして羊水によって守られているからです。
羊水はクッションのような役割を果たし、外部からの衝撃を和らげてくれます。
また、子宮の入り口は子宮頸管によって固く閉じられているため、ペニスが直接子宮内に到達することもありません。
したがって、お腹に強い圧迫をかけるような体位や、あまりに激しい動きを避ければ、通常の性行為の動きが赤ちゃんに直接的な害を及ぼす可能性は極めて低いと言えます。
注意すべきは精液やオーガズムによる「子宮収縮」
物理的な衝撃よりも注意が必要なのが、子宮の収縮です。
性行為による子宮収縮は、主に2つの要因で引き起こされます。
一つは、オーガズム(性的興奮のピーク)に伴う自然な生理現象です。
もう一つは、男性の精液に含まれる「プロスタグランジン」という物質の作用です。
この物質には子宮を収縮させる働きがあり、出産を誘発する陣痛促進剤としても使用されることがあります。
妊娠経過が順調な場合、これらの収縮がすぐに流産や早産につながることは稀ですが、お腹が頻繁に張る場合や、切迫早産の兆候がある場合は特に注意が必要です。
コンドームなしの性行為は「細菌感染」のリスクを高める
妊娠中はホルモンバランスの変化により、膣内の自浄作用が弱まり、免疫力も低下するため、細菌に感染しやすい状態になっています。
コンドームを使用しない性行為は、雑菌が膣内に侵入するリスクを高めます。
細菌が子宮内にまで侵入すると、赤ちゃんを包んでいる膜に炎症が起きる「絨毛膜羊膜炎」を引き起こすことがあります。
この絨毛膜羊膜炎は、前期破水や早産の大きな原因となるため、感染症対策は非常に重要です。
性行為の際は、パートナーの射精の有無にかかわらず、必ず最初から最後までコンドームを正しく装着することが母子を守るために不可欠です。
【時期別】妊娠中の性行為でとくに注意すべきポイント
妊娠期間は大きく初期中期後期の3つに分けられそれぞれの時期で母体の状態や注意すべき点が異なります。
性行為を行う際もその時期ごとの特徴を理解しより慎重な判断をすることが大切です。
安定期だからと油断せずまた妊娠後期だからと過度に神経質になるのではなく正しい知識を持ってパートナーと話し合いながら進めることが求められます。
ここでは各時期の注意点を具体的に見ていきましょう。
妊娠初期(〜15週):つわりや体調変化が激しいため慎重に判断する
妊娠初期は、胎盤がまだ完成しておらず、流産のリスクが他の時期に比べて高いとされています。
また、多くの妊婦がつわりによる吐き気やだるさ、眠気といった体調不良を経験する時期でもあります。
性行為そのものが流産の直接的な原因になることは稀ですが、体調が優れないときに無理をすると、心身の負担が大きくなります。
出血や下腹部痛がある場合は、性行為は絶対に避けるべきです。
この時期は、何よりも母体の安静と心身の安定を優先し、性行為を行うかどうかは体調とよく相談して慎重に判断してください。
妊娠中期(16〜27週):安定期でもお腹の張りを常に確認する
妊娠中期は一般的に「安定期」と呼ばれ、つわりが落ち着き体調が安定する方が多い時期です。
胎盤も完成し、流産のリスクも低下するため、性行為を再開しやすいタイミングかもしれません。
しかし、安定期であっても油断は禁物です。
お腹が少しずつ大きくなり始めるため、腹部を圧迫しない体位を選ぶなどの配慮が必要になります。
また、性行為中やその後に、お腹の張りや痛みを感じないか常に注意を払いましょう。
少しでも異常を感じたらすぐに中断し、安静にしても張りが収まらない場合は、かかりつけの産婦人科に相談することが重要です。
妊娠後期(28週〜):早産のリスクを考慮し特に慎重な判断が必要
妊娠後期になると、お腹が大きく張り出し、動くこと自体が大変になります。
この時期は、子宮収縮を誘発しやすいプロスタグランジンの影響をより受けやすくなるため、早産のリスクを常に考慮しなければなりません。
特に臨月(36週以降)は、いつ陣痛が始まってもおかしくない時期であり、性行為の刺激がきっかけで陣痛や破水につながる可能性もゼロではありません。
性行為を行う場合は、これまで以上に慎重な判断が求められます。
お腹に負担がかからない体位を選び、短時間で済ませるなどの工夫が必要です。
医師から切迫早産の診断を受けている場合は、絶対に性行為を控える必要があります。
妊娠中に性欲が強まるのはなぜ?ホルモンバランスの変化が原因
妊娠すると、体の変化だけでなく、感情や欲求にも変化が現れることがあります。
その一つが性欲の変化です。
一般的には妊娠中は性欲が減退するイメージがあるかもしれませんが、逆に性欲が強まる人も少なくありません。
こうした変化に戸惑い、「妊娠中なのに性欲があるのはおかしいのでは?」と不安に感じる方もいます。
しかし、これはホルモンバランスの変化による自然な現象であり、何もおかしなことではありません。
ホルモンの影響で性的な欲求が高まるのは自然なこと
妊娠中は女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌量が大幅に増加します。
これらのホルモンは妊娠を維持するために不可欠な役割を果たしますが同時に心身にさまざまな影響を与えます。
特にエストロゲンは性的欲求を高める作用があると考えられておりこのホルモンの影響で性欲が強まることがあります。
また血流が増加することで性的な感覚が敏感になることも一因とされています。
もちろんホルモンの影響には個人差が大きく逆につわりや体調不良で性欲が全くなくなる人もいます。
どちらの変化も自然なことだと理解しておくことが大切です。
パートナーの性欲が強く求められた場合の対処法
自分の体調が優れなかったり、気分が乗らなかったりする時に、パートナーから性行為を求められて困ることもあるかもしれません。そのような場合は、我慢したり罪悪感を抱いたりする必要はありません。大切なのは、正直な気持ちと体の状態をきちんと相手に伝えることです。「赤ちゃんのために大事をとりたい」「今はお腹が張っていて不安」など、自分と赤ちゃんを主語にして伝えると、パートナーも状況を理解しやすくなります。性行為だけが愛情表現ではありません。ハグやキス、マッサージなど、他のスキンシップで愛情を確かめ合うことを提案してみるのも一つの良い方法です。
安全な性行為のために夫婦で守りたい5つのルール
妊娠中の性行為は、母体と赤ちゃんの安全を最優先に考える必要があります。
パートナーとの大切なコミュニケーションの時間であると同時に、いくつかのリスクも伴うことを忘れてはいけません。
夫婦二人でこれから紹介するルールを共有し、お互いを思いやりながら実践することが、安心してマタニティライフを送るための鍵となります。
これから紹介する5つのルールをしっかりと確認し、実践していきましょう。
ルール1:感染症予防のためコンドームは必ず装着する
妊娠中は免疫力が低下するため、細菌感染のリスクが高まります。
特に膣内に細菌が侵入し、絨毛膜羊膜炎などを引き起こすと、早産や前期破水の原因となることがあります。
また、精液に含まれるプロスタグランジンは子宮収縮を促す作用があるため、これを子宮頸管に直接触れさせないためにもコンドームは有効です。
これらのリスクを避けるため、性行為の際は必ず最初から最後までコンドームを正しく使用してください。
これは、妊娠中の性行為における最も基本的なルールです。
ルール2:お腹に負担をかけない楽な体位を選ぶ
お腹が大きくなってくると、うつ伏せや仰向けなど、腹部を圧迫する体位は避ける必要があります。
妊婦が楽に感じ、お腹に負担がかからない体位を選びましょう。
具体的には、女性が上になる騎乗位や、横向きで挿入する側臥位(そくがい)、四つん這いになる後背位などが推奨されます。
どの体位が楽に感じるかは個人差があるため、パートナーと話し合いながら、その時々の体調に合わせて最適な体位を見つけることが大切です。
少しでも苦しいと感じたら、すぐに体位を変えるか中断してください。
ルール3:お腹を圧迫したり激しく動いたりする行為は避ける
お腹に負担をかけない体位を選んだとしても、動きが激しいと子宮収縮を誘発しやすくなったり、母体に負担がかかったりします。
妊娠中の性行為は、挿入の深さやスピードをコントロールし、ゆっくりとした優しい動きを心がけることが重要です。
お腹を外から強く押したり、何度も体位を変えたりするような行為も避けましょう。あくまでもリラックスした状態で行い、お互いの体の反応を確認しながら進めることが、安全につながります。パートナーには、妊娠前と同じようにはできないことを理解してもらう必要があります。
ルール4:性行為の前後はシャワーなどで体を清潔に保つ
感染症を予防するためには、コンドームの使用と合わせて、性行為の前後に体を清潔に保つことも大切です。
お互いにシャワーを浴びるか、少なくともデリケートゾーンを洗浄し、清潔な状態で行うように心がけましょう。
特に妊娠中はおりものが増えることもあり、細菌が繁殖しやすい環境になりがちです。
体を清潔にすることで、雑菌が膣内に侵入するリスクを減らすことができます。
性行為後も同様に、体を清潔に保つことで感染症予防につながります。
これは基本的なエチケットであり、母子の健康を守るための重要な習慣です。
ルール5:体調が悪いときは正直にパートナーへ伝える
最も重要なルールは無理をしないことです。
つわり、お腹の張り、痛み、倦怠感、出血など、少しでも体調に異変を感じるときは、勇気を持って「今日はやめておきたい」とパートナーに伝えましょう。
妊娠中は体調が日によって大きく変化します。
断ることに罪悪感を感じる必要は全くありません。
パートナーも、母子を気遣う気持ちがあれば、その意思を尊重してくれるはずです。
言葉で伝えにくい場合は、性行為以外のスキンシップを求めるなど、別の形で愛情を伝えることで、二人の関係性を良好に保つことができます。
これらの症状が出たらすぐに中断!性行為を中止すべき危険のサイン
妊娠中の性行為は、基本的には安全に行うことができますが、それは母体と胎児に異常がないという前提があってのことです。
もし性行為の最中やその後に、これから挙げるような「危険のサイン」が見られた場合は、ただちに性行為を中止し、安静にする必要があります。
症状が改善しない場合や、いつもと違うと感じた場合は、自己判断せず、速やかにかかりつけの産婦人科に連絡し、指示を仰ぐことが何よりも重要です。
お腹に強い張りや痛みを感じたとき
性行為による刺激で一時的にお腹が張ることはありますが、その張りがいつもより強い、休んでもなかなか収まらない、痛みを伴う、規則的に繰り返すといった場合は注意が必要です。
これらは切迫早産や常位胎盤早期剥離など、危険な状態のサインである可能性があります。
オーガズムによる生理的な子宮収縮とは明らかに違う、異常な張りや痛みを感じた際は、即座に行為を中断し、横になって安静にしてください。
それでも症状が続く場合は、時間帯にかかわらず病院に連絡しましょう。
性器からの出血や破水がみられるとき
性行為中やその後に、少量でも性器からの出血が見られた場合は、すぐに中止してください。
特に鮮血や、継続する出血は危険な兆候です。
また、水っぽいおりもの(温かい液体が流れ出る感覚)があった場合は、破水の可能性があります。
破水は、赤ちゃんを感染から守る卵膜が破れた状態であり、放置すると細菌感染のリスクが非常に高まります。
出血や破水が疑われる場合は、安静にしてすぐに産婦人科に連絡し、指示を受けてください。
自己判断で様子を見ることは絶対に避けるべきです。
医師から切迫早産や前置胎盤と診断されている場合
妊婦健診などで、医師から「切迫早産(早産になりかけている状態)」「前置胎盤(胎盤が子宮の出口を塞いでいる状態)」「子宮頸管無力症(子宮の出口が開きやすい状態)」といった診断を受け、安静を指示されている場合は、性行為は絶対に禁止です。
これらの状態では、性行為によるわずかな刺激でも、早産や大出血といった深刻な事態を引き起こすリスクが非常に高くなります。
医師からの指示は必ず守り、自己判断で性行為を再開することは絶対にやめてください。
母子ともに安全な出産を迎えるためには、医師の指導に従うことが最も重要です。
妊娠中の性行為に関するよくある質問
ここでは、妊娠中の性行為に関して多くの妊婦さんやそのパートナーが抱きがちな疑問について、Q&A形式で解説します。
医学的な見解やパートナーとのコミュニケーションのヒントなど、具体的な回答を通じて、皆さんの不安や悩みを少しでも解消することを目指します。
もし個別の状況で気になることがあれば、最終的にはかかりつけの医師に相談することが最も確実です。
Q1.オーガズムによる子宮収縮は流産や早産につながりますか?
妊娠経過が順調な場合、オーガズムによる一時的な子宮収縮が直接的に流産や早産の原因になる可能性は低いとされています。
しかし、お腹の張りが頻繁にある方や、切迫早産のリスクを指摘されている場合は、その収縮が引き金になる可能性も否定できません。
性行為後にお腹の張りが続く場合は、安静にして様子を見てください。
Q2.体調が悪くて断りたい…パートナーへの上手な伝え方は?
あなたを拒否しているのではなく、赤ちゃんと自分の体を守りたいという気持ちを伝えることが大切です。
お腹が張っていて少し不安だから、今日は大事をとりたいなのように、具体的な体調と気遣う気持ちをセットで伝えると、相手も理解しやすくなります。
ハグやキスなど、他のスキンシップを提案するのも良い方法です。
Q3.臨月に入ったらいつまで性行為をしても良いのでしょうか?
正期産とされる妊娠37週以降は、いつ陣痛が来ても良い時期なので、医学的には禁止されていません。
しかし、感染症や破水のリスクは常に存在します。
特に予定日が近づいている時期の性行為は、陣痛を誘発する可能性もあります。
行う場合は必ずコンドームを使用し、お腹の張りなどに注意してください。
最終的にはかかりつけの医師に相談し、許可を得てから判断するのが最も安全です。
まとめ
妊娠の経過が順調で、医師から特別な指示がない限り、毎日の性行為が母体や胎児に直接的な悪影響を及ぼすことはないとされています。
しかし、それは「妊婦の体調が良い」「コンドームで感染対策を行う」「お腹に負担をかけない」といった条件を守ることが大前提です。
妊娠中は時期によって体調やリスクが変化するため、常に体のサインに耳を傾け、少しでも不安があれば無理をしない判断が不可欠です。
出血やお腹の強い張りなど、危険なサインが見られた場合は直ちに中断し、医師に相談してください。
最も重要なのは、夫婦でよく話し合い、お互いの心と体を尊重し合うことです。








