原因不明不妊とは、夫婦ともに一般的な不妊検査を受けても明確な異常が見つからない状態を指します。
しかし、「原因がない」のではなく、現在の検査では特定できない要因が隠れている可能性も少なくありません。
この記事では、原因不明不妊の背景にある隠れた原因や、妊娠に向けた具体的な治療のステップ、そしてステップアップを考えるべきタイミングについて解説します。
原因不明不妊でも諦めないで!妊娠できたケースは多数あります
原因不明不妊と診断されても、その後妊娠したカップルは数多く存在します。
不妊症に悩む夫婦のうち、約10~30%が原因不明不妊にあたるとされ、決して珍しいケースではありません。
実際に妊娠できた方のブログなどを見ると、同じ悩みを乗り越えた体験談が希望につながることもあります。
原因がわからないという状況は不安を伴いますが、適切な治療やアプローチによって妊娠に至る可能性は十分にあり、決して諦める必要はありません。
「原因不明」は「異常なし」ではない?隠れているかもしれない5つの原因
不妊検査で「原因不明」と診断されることは、「身体に全く異常がない」という意味ではありません。
基本的な検査では捉えきれない、妊娠できない理由が隠れている可能性があります。
例えば、卵子をキャッチする機能の問題や、受精・着床のプロセスにおける見えない障害などが考えられます。
ここでは、通常の検査では見過ごされがちな、妊娠を妨げているかもしれない5つの潜在的な原因について詳しく見ていきます。
卵管采のピックアップ障害が起きていないか
ピックアップ障害とは、卵巣から排卵された卵子を、卵管の先端にある卵管采がうまくキャッチできない状態のことです。
卵管采はイソギンチャクのような形をしており、卵子を卵管内に取り込む重要な役割を担っています。
この機能に問題があると、精子と卵子が出会うことができず、受精に至りません。
ピックアップ障害は、クラミジア感染症による卵管周囲の癒着や子宮内膜症などが原因で起こることがありますが、通常の卵管造影検査では発見が難しく、腹腔鏡検査によって初めて診断されるケースも少なくありません。
受精や着床のプロセスに問題が隠れていないか
タイミング法や人工授精では確認できない、受精や着床の段階に問題が潜んでいることがあります。
これは、体外受精に進んで初めて明らかになる原因の一つです。
例えば、精子と卵子が出会っても受精が成立しない「受精障害」や、受精卵が分割を途中で止めてしまう「胚の発育停止」、さらには子宮内膜にうまく根付けない「着床障害」などが挙げられます。
これらの現象は、体外で受精のプロセスを直接観察することで判明するため、原因不明不妊の背景にある重要な要因と考えられています。
子宮内フローラのバランスが乱れていないか
子宮内フローラとは、子宮内に存在する細菌の集まりのことです。
近年の研究で、子宮内における特定の善玉菌(ラクトバチルス)が90%以上を占める良好な環境が、受精卵の着床率や妊娠率に大きく関わっていることがわかってきました。
このラクトバチルスが減少するなど、子宮内フローラのバランスが乱れると、着床しにくい環境になってしまう可能性があります。
このバランスは専用の検査で調べることができ、原因不明不妊、特に反復着床不全の要因の一つとして注目されています。
見過ごされがちな免疫因子が影響していないか
本来は体を異物から守る免疫システムが、時に妊娠の妨げとなることがあります。
例えば、受精卵を異物と認識して攻撃してしまう「同種免疫異常」や、自身の体を攻撃する自己抗体が血流を悪化させ、着床を阻害するケースなどが考えられます。
代表的なものに、血液を固まりやすくする抗リン脂質抗体や、甲状腺機能に関わる抗甲状腺抗体などがあります。
これらの免疫因子は特殊な血液検査で調べることが可能で、原因不明不妊の背景にある可能性の一つとして考慮されます。
卵子や精子の質が低下していないか
通常の不妊検査では、卵胞の大きさや精子の数・運動率といった量的な側面を評価しますが、「質」までを正確に測ることは困難です。
加齢や生活習慣の乱れ、酸化ストレスなどにより、見た目ではわからない卵子や精子の質の低下が起こっている可能性があります。
卵子の質が低いと受精やその後の発育がうまくいかず、精子の質が低いとDNAの損傷などにより受精能力が低下することがあります。
体外受精の過程で、受精率が低い、あるいは胚の発育が良くないといった場合に、初めて質の問題が疑われます。
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原因不明不妊から妊娠へ進むための具体的な治療ステップ
原因不明不妊の治療は、一般的に妊娠の可能性や身体への負担を考慮し、段階的に進められます。
この方法は「ステップアップ治療」と呼ばれ、自然な妊娠に近い「タイミング法」から始まり、より妊娠率の高い「人工授精」、そして「体外受精」へと進んでいくのが基本的な流れです。
それぞれの治療法には特徴があり、どのステップを選択するかは、年齢やこれまでの治療歴、そして夫婦の希望を総合的に判断して決定されます。
ステップ1:タイミング法で自然妊娠を目指す
タイミング法は、超音波検査で卵胞の発育状況を確認し、排卵日を正確に予測して性交渉のタイミングを合わせる方法です。
医師の指導のもとで行うことで、自己流よりも高い精度で妊娠の可能性が高い時期を特定できます。
原因不明不妊の場合、排卵や卵管、精子に明らかな問題がないため、まずはこの方法で4〜6周期ほど自然妊娠を目指すことが一般的です。
排卵誘発剤を併用して、排卵をより確実にする場合もあります。
身体的な負担が少なく、最も自然な形での妊娠を目指す最初のステップです。
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ステップ2:人工授精(AIH)で妊娠の確率を高める
人工授精(AIH)は、排卵のタイミングに合わせて、採取した精子の中から運動性の良好なものを洗浄・濃縮し、細いカテーテルを使って子宮内に直接注入する治療法です。
精子が子宮頸管を通過するプロセスを省略し、卵子がいる卵管まで到達するのを助けることで、受精の確率を高めます。
タイミング法でなかなか妊娠に至らない場合や、精子の運動率がやや低い場合、性交障害がある場合などに選択されます。
タイミング法より一歩進んだ治療ですが、受精自体は体内で自然に行われるため、比較的身体への負担は少ないです。
ステップ3:体外受精(IVF)で原因の特定と妊娠を目指す
体外受精(IVF)は、排卵誘発剤で育てた卵子を体外に取り出し、精子と受精させてできた受精卵(胚)を子宮内に戻す高度な生殖医療技術です。
この治療の大きな特徴は、受精から初期の胚発生までの過程を体外で直接確認できる点にあります。
そのため、これまで分からなかった受精障害や胚の質の問題といった、原因不明不妊の「隠れた原因」が判明することがあります。
他の治療法と比較して妊娠率は高いですが、身体的・経済的な負担も大きくなるため、医師と十分に相談した上で進めることが重要です。
不妊治療のステップアップを検討すべき2つのタイミング
原因不明不妊の治療を続ける中で、「いつまで今の治療を続けるべきか」「次の段階に進むべきか」という悩みは多くの夫婦が抱える問題です。
ステップアップを判断するための明確な基準はありませんが、一般的には「年齢」と「これまでの治療期間」が重要な目安となります。
例えば、20代でも早く結果を望む場合や、治療期間が2年近くになる場合は、次のステップを考えるきっかけになります。
ご自身の年齢を一つの目安にする
ステップアップを検討する上で、年齢は非常に重要な要素です。
特に女性の妊孕性は35歳を境に緩やかに低下し始め、40歳以降はそのスピードが加速する傾向にあります。
そのため、35歳以上の場合や、AMHの値が低いなど卵巣予備能の低下が示唆される場合は、タイミング法や人工授精を漫然と続けるよりも、早めに体外受精へのステップアップを検討することが推奨されます。
時間を有効に使うという観点から、年齢に応じた治療計画を立てることが大切です。
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これまでの治療期間を基準に判断する
現在の治療法をどれくらいの期間続けているかも、ステップアップを判断する目安となります。
例えば、タイミング法や人工授精による妊娠は、治療開始から4〜6周期以内に成立することが多いとされています。
この回数を超えても結果が出ない場合は、その治療法では妊娠が難しい可能性が考えられます。
そのため、同じ治療を1年以上続けている場合などは、一度立ち止まり、医師と相談の上で次の治療ステップに進むことを具体的に検討する良いタイミングと言えます。
妊娠に近づくために今日から始められる4つの生活習慣
不妊治療と並行して、日々の生活習慣を見直すことは、妊娠しやすい体作りの基本です。
特定の治療法だけに頼るのではなく、食事や運動、睡眠といった基本的な要素を整えることで、心身のコンディションが向上し、治療効果を高めることにもつながります。
特に、不妊治療中は精神的なストレスも大きくなりがちですが、生活習慣の改善は、そうしたストレスを緩和する上でも重要な役割を果たします。
栄養バランスの整った食事で体の中から改善する
健康な体は、バランスの取れた食事から作られます。
特に、卵子や精子の質を保つためには、抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンE、細胞の生成を助ける葉酸、男性の生殖機能に関わる亜鉛などを意識的に摂取することが重要です。
インスタント食品や加工食品を避け、野菜や果物、良質なたんぱく質(魚、大豆製品、赤身肉など)を多く取り入れた、品数の多い和食中心の食生活を心がけましょう。
体を冷やす冷たい飲み物や食べ物の摂りすぎにも注意が必要です。
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適度な運動や入浴で体の冷えを防ぐ
体の冷えは血行不良を引き起こし、子宮や卵巣への血流を低下させる一因となります。
血流が滞ると、ホルモンの働きが鈍ったり、子宮内膜が十分に厚くならなかったりする可能性があります。
ウォーキングやストレッチ、ヨガといった適度な運動を習慣にすることで、全身の血行が促進され、体が温まります。
また、シャワーだけで済ませず、38〜40℃程度のぬるめのお湯にゆっくりと浸かる入浴も、リラックス効果と共に血行を改善するのに有効です。
質の高い睡眠でホルモンバランスを整える
睡眠は、体の疲れを取るだけでなく、ホルモンバランスを整える上で非常に重要な役割を担っています。
特に、妊娠に関わる多くのホルモンは、私たちが眠っている間に分泌が調整されます。
睡眠不足や不規則な生活は、このホルモンバランスを乱す原因となり得ます。
毎日決まった時間に就寝・起床することを心がけ、質の高い睡眠を7〜8時間確保するようにしましょう。
就寝前のスマートフォン操作は、脳を覚醒させて眠りの質を下げるため、控えることが推奨されます。
心と体をリラックスさせてストレスを軽減する
不妊治療が長引くと、精神的なストレスが大きくなりがちです。
過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血行不良やホルモン分泌の異常を引き起こす可能性があります。
結果を急ぐあまり、自分を追い詰めすぎないことが大切です。
趣味に没頭する時間を作ったり、自然豊かな場所を散歩したり、パートナーとゆっくり会話を楽しんだりと、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。
心と体を意識的に休ませ、穏やかな気持ちで過ごす時間を増やすことが重要です。
原因不明不妊に関するよくある質問
原因不明不妊の治療を進める中で、多くのカップルがさまざまな疑問や不安に直面します。体外受精にステップアップしても原因が特定できないケースがあること、夫婦間での意見の相違、そして治療の終結をいつ考えるべきかといった問題は、非常にデリケートでありながらも避けては通れないテーマです。
ここでは、そうしたよくある質問に対して、基本的な考え方や対処のヒントを簡潔にまとめました。今後の治療方針を考える上での参考にしてください。
Q1.体外受精にステップアップすれば、必ず原因はわかりますか?
必ず原因がわかるとは限りません。
しかし、体外受精の過程で卵子と精子を直接観察するため、受精障害や胚の質の低下など、これまで不明だった原因が判明する可能性はあります。
原因特定の一助にはなりますが、それでも明確な原因が見つからないケースも存在します。
Q2.治療方針について夫婦で意見が合わない時はどうすればいいですか?
まずはお互いの気持ちや不安、治療に対する考えを冷静に話し合う時間を設けることが大切です。
それでも意見がまとまらない場合は、妊活専門鍼灸師や不妊カウンセラーといった第三者の専門家に相談し、客観的な情報やアドバイスをもらうことで、二人にとって納得のいく方向性を見つけやすくなります。
Q3.いつまで治療を続けるべきか、やめどきが分かりません
治療のやめどきに明確な正解はありません。
ご夫婦の年齢や経済的な状況、心身の負担などを総合的に考慮し、二人で話し合って「何歳まで」「あと何回まで」といった具体的な目標や期限を設けることが一つの方法です。
これにより、精神的な負担が軽減される場合もあります。
まとめ
原因不明不妊は、一般的な検査では異常が見つからない状態ですが、「異常なし」ではなく、ピックアップ障害や受精障害など隠れた原因が存在する可能性があります。
治療はタイミング法から始まり、人工授精、体外受精へと段階的に進めるステップアップ方式が一般的です。
どの治療法を選択し、いつステップアップするかは、年齢やこれまでの治療期間などを目安に判断することが求められます。
また、治療と並行して、食事や運動といった生活習慣を見直すことも重要です。
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