不妊治療で初めてクロミッドを服用する際、多くの方が「1周期目で妊娠できる確率はどのくらいなのか」という期待と不安を抱きます。
クロミッドは排卵を助ける効果が期待できる一方、実際の妊娠率は排卵率とは異なるのが現実です。
この記事では、クロミッド1周期目の妊娠率の目安や、服用回数との関係、そして多胎妊娠のリスクや副作用について詳しく解説します。
実際にクロミッドを服用して妊娠した方の多くが知っておきたかった情報や、もし妊娠しない場合の次の治療ステップについても触れていきます。
クロミッドとは?まずは基本的な効果と仕組みを理解しよう
クロミッドは、不妊治療において広く用いられる経口薬で、排卵がうまくいかない排卵障害の改善を目的として処方されます。
特に、多嚢胞性卵巣症候群や無排卵周期症などが原因で排卵しにくい場合に、第一選択薬として選ばれることが多い薬です。
長年の使用実績があり、比較的安価であるため、排卵誘発治療の初期段階で導入されやすい特徴があります。
医師の指導のもと、正しい用法で服用することが重要です。
排卵を促す「排卵誘発剤」の代表的な薬
クロミッド(一般名:クロミフェンクエン酸塩)は、排卵誘発剤の中でも長い歴史を持つ代表的な薬です。
主に、自力での排卵が難しい、あるいは排卵周期が不規則な排卵障害を持つ女性に対して処方されます。
例えば、卵胞がうまく育たない、または育っても排卵に至らないといった症状の改善を目指します。
不妊治療の第一歩としてタイミング法を行う際に、排卵日をより正確に予測し、妊娠の可能性を高める目的で用いられることが多く、不妊治療クリニックでは頻繁に使用される薬の一つです。
脳に働きかけて卵胞の発育を刺激する仕組み
クロミッドは、直接卵巣に作用するのではなく、脳の視床下部にあるエストロゲン(卵胞ホルモン)の受容体に働きかけます。
この作用により、脳は「体内のエストロゲンが不足している」と錯覚します。
すると、脳はそれを補うためにゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)の分泌を促し、その指令を受けた下垂体から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が多く分泌されるのです。
このFSHの作用によって卵巣が刺激され、卵胞の発育が促進されて排卵に至る、という仕組みです。
クロミッド1周期目の妊娠率は約10〜20%が目安
クロミッドを服用した場合、1周期あたりの妊娠率は一般的に5〜12.1%と報告されています。この数値は、排卵が誘発される確率よりも実際の妊娠に至る確率が低いことを示しています。排卵は妊娠の第一歩ですが、その後の受精や着床といった複数の段階をクリアする必要があるためです。また、妊娠率は服用周期によっても変動する傾向が見られます。
排卵する確率と妊娠する確率には差がある
クロミッドを服用すると、約70〜80%の高い確率で排卵が起こると報告されています。
しかし、排卵したからといって必ずしも妊娠に至るわけではありません。
1周期あたりの妊娠率は約10〜20%程度にとどまります。
この差は、妊娠が排卵だけでなく、卵子の質、精子の状態、受精、子宮内膜への着床といった多くのステップを経て成立するためです。
クロミッドはあくまで排卵をサポートする薬であり、その後の過程が順調に進むかどうかは別の要素が関わってきます。
服用回数と妊娠率の関係性|1周期目が最も高い傾向
クロミッドによる妊娠率は、服用1周期目が最も高い傾向にあり、その後周期を重ねるごとに徐々に低下していくとされています。
これは、クロミッドが効きやすい人は早い段階で結果が出やすいことや、長期服用による副作用(子宮内膜が薄くなるなど)が影響するためと考えられます。
ただし、1周期目で妊娠しなくても、治療を続けることで妊娠に至るケースは多くあります。
一般的に、クロミッド服用者の約半数は3〜4周期目までに妊娠するといわれており、焦らずに治療を継続することが考えられます。
自然妊娠の確率と比較してどう違う?
健康な男女が排卵のタイミングに合わせて性交渉を持った場合の自然妊娠率は、1周期あたり約20%といわれています。
一方、クロミッドを用いた場合の妊娠率は約10〜20%であり、自然妊娠の確率と大きく変わらないか、やや低い水準です。
このことから、クロミッドは妊娠率を飛躍的に向上させる魔法の薬ではなく、あくまで排卵障害によって妨げられていた「妊娠のスタートラインに立つ」ための手助けをする薬と理解することが重要です。
排卵という最初の関門をクリアにする役割を担います。
クロミッドの正しい飲み方と治療スケジュール
クロミッドによる治療効果を最大限に引き出すためには、医師の指示に従って正しい用法・用量を守ることが不可欠です。
一般的には、月経周期の特定の日から服用を開始し、超音波検査などで卵胞の発育状況を確認しながら治療を進めます。
排卵日を予測し、適切なタイミングで性交渉を持つ「タイミング法」と組み合わせて行われるのが基本的な流れです。
自己判断で服用を中止したり、量を変更したりすることは避けるべきです。
生理開始3~5日目から5日間服用するのが一般的
クロミッドの服用は、月経周期の3日目から5日目のいずれかの日から開始し、1日1〜3錠を5日間連続で服用するのが一般的な方法です。
どの日から開始するか、また1日の服用量は、個々の卵巣の反応性や治療歴などに応じて医師が判断します。
この時期に服用を開始することで、脳から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)を効率よく増やし、卵胞を効果的に育てることができます。
必ず処方された通りの用法・用量を守り、決められた期間服用を続けることが治療の基本となります。
服用後の排卵はいつ?タイミング法の進め方
クロミッドの服用終了後、およそ5日から10日後に排卵が起こることが多いとされています。
そのため、服用終了後の数日から、クリニックで経腟超音波検査(エコー検査)を行い、卵胞の大きさ(通常18〜20mm程度で排卵)や子宮内膜の厚さをチェックします。
医師はこれらの情報から排卵日を予測し、最も妊娠しやすいタイミング(排卵日の直前から排卵日当日)を指導します。
この指導に合わせて性交渉を持つのが「タイミング法」です。
場合によっては、排卵をより確実にするためにhCG注射を併用することもあります。
もしも飲み忘れてしまった場合の対処法
クロミッドを飲み忘れてしまった場合は、自己判断で対処せず、速やかに処方されたクリニックや医師に電話で連絡し、指示を仰ぐことが最も重要です。
飲み忘れに気づいた時間や、飲み忘れたのが何日目かによって対応が異なるためです。
例えば、気づいた時点ですぐに飲むよう指示されることもあれば、その周期の服用は中止となる場合もあります。
絶対に避けるべきなのは、忘れた分を取り戻そうとして一度に2回分を服用することです。
過剰摂取は副作用のリスクを高める可能性があります。
知っておきたいクロミッドの副作用とリスク
クロミッドは多くのメリットがある一方で、いくつかの副作用やリスクも存在します。
これらの可能性を事前に理解しておくことは、安心して治療を進める上で非常に重要です。
副作用には、妊娠の成立を妨げる可能性のあるものから、多胎妊娠のリスク、身体的な不調まで様々です。
ほとんどの場合は軽度ですが、まれに重篤な副作用が起こる可能性もあるため、体調の変化には注意し、気になる症状があればすぐに医師に相談することが求められます。
子宮内膜が薄くなり着床しにくくなる可能性
クロミッドが持つ「抗エストロゲン作用」は、排卵を誘発する一方で、子宮内膜の増殖を抑制してしまうことがあります。
エストロゲンは子宮内膜を厚くし、受精卵が着床しやすいようにフカフカのベッドを作る働きを担っています。
しかし、この作用が妨げられると、子宮内膜が十分に厚くならず、着床しにくい状態になる可能性があります。
特にクロミッドを長期間(6周期以上など)服用し続けると、この副作用が現れやすくなるため、定期的な超音波検査で内膜の厚さを確認することが重要です。
頸管粘液が減少し精子が子宮へ到達しにくくなる
クロミッドの抗エストロゲン作用は、子宮頸管から分泌される頸管粘液の量や質にも影響を与えることがあります。
排卵期に増える透明で伸びの良い頸管粘液は、精子が子宮内へスムーズに進入するのを助ける役割を果たしています。
しかし、クロミッドの服用によってこの粘液が減少したり、粘り気が強くなったりすると、精子の運動が妨げられ、子宮内に到達しにくくなる可能性があります。
これも、排卵はしているのに妊娠に至らない一因となることがあり、人工授精へのステップアップを検討する理由の一つにもなります。
双子など多胎妊娠になる確率が上昇する
クロミッドを服用すると、複数の卵胞が同時に発育し、排卵される可能性が高まります。
その結果、多胎妊娠(双子や三つ子など)になる確率が自然妊娠に比べて上昇します。
自然妊娠での多胎率は約1%ですが、クロミッド服用周期では約4〜5%に増加するという報告があります。
多胎妊娠は、単胎妊娠に比べて早産や妊娠高血圧症候群などのリスクが高まるため、事前にその可能性を理解しておく必要があります。
ただし、90%以上は単胎妊娠であり、過度に心配する必要はありません。
頭痛や吐き気などの身体的な不調
クロミッドの服用中は、ホルモンバランスの変化により、様々な身体的な不調を感じることがあります。
比較的よく見られる副作用としては、頭痛、吐き気、顔のほてり、めまい、気分の落ち込み、イライラ感、下腹部痛などが挙げられます。
また、目がかすむといった視覚症状が現れることもあります。
これらの症状の多くは一時的で、服用が終了すれば改善することがほとんどですが、症状が重い場合や日常生活に支障をきたす場合は、我慢せずに医師や薬剤師に相談してください。
卵巣が腫れる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスク
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、排卵誘発剤によって卵巣が過剰に刺激され、大きく腫れてしまう状態です。
軽症の場合は下腹部の張りや軽い痛み程度ですが、重症化すると腹水や胸水が溜まったり、血液が濃縮されて血栓症を引き起こしたりする危険な副作用です。
クロミッドの服用による重度のOHSSの発生頻度は低いとされていますが、特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方はリスクが高い傾向にあります。
急激な体重増加やお腹の張り、吐き気などの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。
クロミッドを服用しても妊娠しない場合の次のステップ
クロミッドを数周期にわたって服用しても妊娠に至らない場合、次の治療段階へ進むことを検討します。
不妊治療は一つの方法に固執するのではなく、体の状態や治療への反応を見ながら、段階的にアプローチを変えていくことが一般的です。
薬物治療と並行して自身の生活習慣を整えることや、他の薬剤との併用、さらには人工授精や体外受精といったより高度な生殖医療技術(ART)へのステップアップが選択肢として考えられます。
生活習慣を見直して妊娠しやすい身体づくりを心がける
薬物治療の効果を高めるためには、土台となる身体の状態を整えることが非常に重要です。
妊娠しやすい身体づくりの基本は、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、質の良い睡眠です。
特に、体を冷やさないように温かい食事を心がけたり、ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にしたりすることは、血行を促進し、子宮や卵巣の機能を高める助けになります。
また、ストレスはホルモンバランスを乱す大きな要因となるため、リラックスできる時間を作り、心身ともに健やかな状態を保つことが大切です。
hCG注射など他の治療法との併用を検討する
クロミッドによって卵胞が十分に発育しても、自力での排卵がうまくいかないケースがあります。
このような場合、卵胞の最終的な成熟と排卵を促すためにhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)注射を併用する方法があります。
hCG注射を打つと、約36時間後に排卵が起こると予測できるため、より正確なタイミング法の実践が可能です。
また、クロミッドの副作用で子宮内膜が薄くなってしまう場合には、エストロゲン製剤(プレマリンなど)を補充して内膜を厚くするなど、弱点を補うための治療法を組み合わせることもあります。
人工授精や体外受精へのステップアップ
クロミッドを用いたタイミング法を3〜6周期程度試しても結果が出ない場合、次のステップとして人工授精(AIH)が検討されます。
これは、洗浄・濃縮した精子を排卵のタイミングに合わせて直接子宮内に注入し、受精の確率を高める方法です。
頸管粘液の問題や、精子の運動率がやや低い場合に有効です。
人工授精でも妊娠に至らない場合や、卵管の閉塞、重度の男性不妊など他の要因がある場合は、体外で卵子と精子を受精させる体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)といった、より高度な生殖補助医療へのステップアップが視野に入ってきます。
クロミッドに関するよくある質問
クロミッドによる治療を始めるにあたり、多くの方が妊娠率や副作用以外にも様々な疑問や不安を抱えています。
ここでは、特に多く寄せられる「体重増加」「流産率」「治療の継続期間」に関する質問について、簡潔にお答えします。
治療に関する最終的な判断は、必ず主治医と相談の上で行うようにしてください。
クロミッドを飲むと太るって本当ですか?
クロミッドの副作用として体重増加が直接的に明記されているわけではなく、薬自体が原因で太るという医学的根拠は明確ではありません。
しかし、ホルモンバランスの変化によって体に水分が溜まりやすくなり、むくみが生じたり、食欲が増進したりすることで、結果的に体重が増加したと感じる可能性は考えられます。
大幅な体重増加が続く場合は、他の原因も考えられるため医師に相談してください。
クロミッドで妊娠した場合、流産率は上がりますか?
クロミッドの服用自体が流産率を直接的に上昇させるという医学的なエビデンスはありません。
不妊治療を受けて妊娠した場合の流産率は、自然妊娠と比較して高いというデータがありますが、これはクロミッドが原因というより、不妊治療を受ける方の年齢層が比較的高かったり、もともと流産しやすい背景を持っていたりすることが影響していると考えられています。
薬の影響を過度に心配する必要はありません。
何周期までクロミッド治療を続けるのが一般的ですか?
明確な規定はありませんが、一般的には3〜6周期を一つの目安とすることが多いです。
これは、クロミッドで妊娠に至るケースの多くが治療開始から6周期以内に見られること、また長期間の服用は子宮内膜が薄くなるなどの副作用のリスクを高める可能性があるためです。
効果が見られない場合は、漫然と継続するのではなく、人工授精など次の治療ステップへの移行を検討します。
まとめ
クロミッドを服用した1周期目の妊娠率は約10〜20%が目安であり、排卵する確率(約70〜80%)とは差があります。
妊娠率は1周期目が最も高い傾向にありますが、数周期かけて妊娠に至るケースも多いため、1回で結果が出なくても焦る必要はありません。
一方で、子宮内膜が薄くなる、多胎妊娠の確率が上がるなどの副作用やリスクも存在します。
クロミッドで妊娠に至らない場合は、生活習慣の見直しや他の治療法との併用、人工授精などへのステップアップが検討されます。
治療を進める上では、医師とよく相談することが重要です。








