男性不妊の基準とは?精液検査の数値から原因、改善策まで紹介

男性不妊の基準とは?精液検査の数値から原因、改善策まで紹介

男性不妊は、不妊に悩むカップルの約半数に関わる問題とされています。しかし、女性側の検査や治療が先行しやすく、男性が積極的に精液検査を受けるケースはまだ少ないのが現状です。精子の数や質、精子が正常に動けるかどうかは妊娠の可能性に大きく影響するため、男性不妊の基準を知り、早めに検査を受けることが重要です。本記事では、男性不妊の基準や精液検査の数値、原因、改善策について詳しく解説します。

男性不妊とは?

男性不妊とは、男性側に妊娠を妨げる要因がある状態を指します。不妊の原因は女性だけでなく、男性にも関係していることが多いため、夫婦で検査を受け、正しい知識を持つことが大切です。

男性不妊は妊娠を希望するカップルの約半数に関わる

不妊症の原因は、男女半々の割合で存在すると言われています。日本では女性が先に検査を受けることが多いですが、男性側に原因がある場合も少なくありません。男性の不妊の原因は、精子の数や運動率の低下、精路の閉塞などさまざまです。精液検査を受けることで、自分の状態を知ることができ、妊娠に向けた具体的な対策を立てることができます。

原因は精子の質や量、精路の異常など様々

男性不妊の主な原因は、精子の量が少ない乏精子症、精子が動かない精子無力症、正常な形の精子が少ない奇形精子症などがあります。また、精巣や精路の異常、ホルモンバランスの乱れが原因で精子が作れない無精子症も男性不妊の一因です。生活習慣や加齢による影響も大きく、健康管理が重要となります。

不妊の原因は男女どちらにもある可能性がある

不妊の原因は、女性だけではなく、男性側にもあることが多いため、夫婦で検査を受けることが重要です。精子の状態は食生活やストレスの影響を受けることもあるため、生活習慣を見直すことで改善する可能性があります。不妊治療を進める際には、男女どちらの健康状態も考慮することが大切です。

男性不妊の診断:精液検査でわかること

精液検査は、男性不妊を診断するための基本的な検査であり、妊娠の可能性を評価する上で重要な役割を果たします。この検査では、精液の量や精子の数、運動率、形態などを詳細に調べ、正常な受精が可能かどうかを判断します。精子の状態は生活習慣や体調によって変動するため、1回の検査結果だけで判断せず、数回の検査を行うことが推奨されています。また、精液検査は簡単に受けることができ、精液の採取後、短時間で結果が出るため、不妊の原因を特定するための最初のステップとして非常に有効です。

精液量、精子濃度、運動率、正常形態率などをチェック

精液検査では、主に以下の4つの項目をチェックします。

  • 精液量(射精時の精液の量)
  • 精子濃度(1mlあたりの精子数)
  • 運動率(活発に動いている精子の割合)
  • 正常形態率(正常な形の精子の割合)

これらの項目のどれかに異常があると、精子が卵子に到達しにくくなり、自然妊娠が難しくなる可能性があります。特に、運動率が低いと精子が適切に前進できず、受精の確率が下がります。精液検査を受けることで、自分の精子の状態を数値化し、どの部分に問題があるのかを明確にすることができます。

WHO(世界保健機関)の基準値をもとに判断

WHO(世界保健機関)は、男性不妊の基準となる精液検査の正常値を定めています。これに基づき、各項目の数値が正常範囲内かどうかが判断されます。

  • 精液量:1.5ml以上
  • 精子濃度:1mlあたり1600万個以上
  • 運動率:30%以上(前進運動を行う精子)
  • 正常形態率:4%以上(正常な形の精子の割合)

この基準値を下回る場合、精子の状態に問題があると考えられ、妊娠の確率が低下する可能性があります。ただし、これらの数値が低くても妊娠できるケースもあり、また、正常値内であっても妊娠が難しい場合もあるため、精液検査の結果だけでなく、総合的な判断が必要です。

精液検査は男性不妊のスクリーニング検査として重要

精液検査は、不妊の原因を特定するための最初のステップとして非常に重要です。女性側の検査と比較して手軽に受けることができ、病院やクリニックで簡単に実施可能です。精液の状態は生活習慣やストレス、栄養状態によって変化するため、一度の検査結果で判断せず、複数回検査を受けることが推奨されます。また、異常が見つかった場合でも、生活改善や適切な治療により精子の状態を改善できるケースが多いため、早めの検査を行うことが重要です。

精液検査の主な基準値と意味

精液検査では、精子の数や運動率、形態などを詳細にチェックし、妊娠の可能性を評価します。精液の状態は、男性の健康状態や生活習慣、ストレスなどの影響を受けやすく、一度の検査だけではなく、数回にわたって測定することが推奨されます。精液の状態が良好であれば自然妊娠の可能性が高まりますが、基準値を下回る場合には、生活改善や治療が必要になることがあります。ここでは、WHO(世界保健機関)が定める精液検査の基準値について解説します。

精液量:1.5ml以上が目安

精液量は、精子が子宮内に到達するために重要な要素です。通常、射精時に1.5ml以上の精液があることが望ましいとされています。精液量が少ないと、精子が十分に運ばれず、妊娠の確率が低下する可能性があります。精液量の減少には、前立腺や精嚢の機能低下、ホルモンバランスの乱れ、水分不足などが関係している場合があります。特に、頻繁な射精や加齢によって精液量が減少することもありますので、精液検査を複数回受けて、変動を確認することが重要です。

精子濃度:1mlあたり1600万個以上が基準

精子濃度は、1mlあたりに含まれる精子の数を指します。WHOの基準では、精子濃度が1600万個/ml以上が正常とされています。精子の数が少ないと、卵子と出会う確率が低くなり、妊娠の可能性が下がります。乏精子症と診断される場合、ホルモン分泌の異常、精巣の機能低下、過去の感染症の影響、生活習慣の乱れなどが原因として考えられます。精子濃度が低い場合でも、適切な治療や生活改善によって回復する可能性があります。

運動率:前進運動精子が30%以上が望ましい

精子が元気に動くことは、受精にとって非常に重要です。WHOの基準では、精子の運動率が30%以上であることが望ましいとされています。精子の運動率が低いと、卵子まで到達する精子が減少し、受精の可能性が低くなります。運動率が低下する原因として、喫煙、アルコールの過剰摂取、ストレス、ホルモンの乱れ、過去の感染症、遺伝的要因などが挙げられます。適度な運動や食生活の改善、ストレスの軽減などで精子の運動率を向上させることができるため、日常生活の見直しが重要です。

正常形態率:正常な形の精子が4%以上が目安

精子の形(形態)は、受精の成功率に大きく関係します。WHOの基準では、正常な形をした精子の割合が4%以上であることが望ましいとされています。奇形精子が多いと、受精しにくくなったり、受精したとしても胚の成長が正常に進まない可能性があります。奇形精子症の原因として、遺伝的要因や加齢、生活習慣の乱れ、環境ホルモンの影響などが考えられます。栄養バランスの取れた食事や抗酸化作用のある食品の摂取、適度な運動によって精子の質を向上させることが期待できます。

精液検査で異常が見つかったら?考えられる原因

精液検査の結果、基準値を下回る異常が見つかった場合、何らかの原因が影響している可能性があります。男性不妊の原因はさまざまで、病気が関係していることもあれば、生活習慣やストレスが影響していることもあります。ここでは、男性不妊の代表的な原因を紹介します。

精索静脈瘤による精子形成の障害

精索静脈瘤は、精巣の周囲の静脈が異常に拡張し、血流が滞ることで精子の形成が阻害される病気です。この状態が続くと、精巣の温度が上昇し、精子の質が低下する原因になります。精索静脈瘤は男性不妊の原因として最も多く見られ、特に20~40代の男性に多いとされています。軽度の場合は生活改善で様子を見ることもありますが、重度の場合は手術が検討されることもあります。

感染症や炎症による影響

過去にクラミジアや淋病などの性感染症にかかったことがある場合、精管や精巣上体に炎症が起こり、精子の通り道が狭くなったり、詰まることがあります。また、前立腺炎や尿道炎などが原因で精子の運動率が低下することもあります。感染症の疑いがある場合は、早めに泌尿器科や不妊治療専門のクリニックで検査を受けることが重要です。

ホルモンバランスの乱れ

精子の形成には、脳下垂体から分泌されるホルモンが大きく関与しています。ホルモンの分泌が不足していると、精子が正常に作られなくなります。ストレスや肥満、甲状腺機能の異常などがホルモンバランスの乱れを引き起こす要因となります。ホルモンの分泌状態を調べるためには、血液検査が必要になります。

生活習慣やストレスの影響

喫煙、過度な飲酒、睡眠不足、運動不足、ストレスの蓄積などは、精子の質を低下させる大きな要因です。特に喫煙は精子のDNA損傷率を高めることが知られており、精子の運動率や形態異常にも影響を与えます。また、長時間のデスクワークや熱いお風呂、サウナなどで陰部が過度に温まることも、精子の生成に悪影響を及ぼす可能性があります。生活習慣の見直しによって、精子の状態を改善できるケースも多いため、バランスの良い食事や適度な運動、十分な休息を取ることが大切です。

男性不妊を改善するためのアプローチ

男性不妊が疑われる場合、精子の状態を改善するための対策を取ることが重要です。精子の質は生活習慣や環境の影響を大きく受けるため、日常の過ごし方を見直すことで改善が期待できます。また、医学的な治療を受けることで、より効果的な改善を図ることも可能です。ここでは、男性不妊を改善するための具体的なアプローチについて詳しく解説します。

生活習慣を見直す

生活習慣の改善は、精子の質を向上させるための基本的なアプローチです。バランスの取れた食事を心がけることで、精子の形成に必要な栄養素を十分に摂取することができます。特に、亜鉛やビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10などの抗酸化物質は、精子の酸化ストレスを軽減し、運動率や形態異常を改善する効果が期待できます。また、適度な運動を取り入れることで、血流を促進し、精巣の機能を向上させることができます。

禁煙、禁酒を心がける

喫煙や過度な飲酒は、精子の質を著しく低下させる要因になります。タバコに含まれる有害物質は、精子のDNAを損傷し、運動率や形態の異常を引き起こすことが知られています。また、アルコールは男性ホルモンの分泌を抑制し、精子の生成に悪影響を及ぼします。男性不妊のリスクを減らすためにも、禁煙や節酒を意識することが重要です。

ストレスを軽減する

過度なストレスは、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、精子の生成に悪影響を与えることがあります。特に、慢性的なストレスは精巣の機能を低下させ、精子の数や運動率を低下させる原因となります。リラックスできる時間を確保し、適度な運動や趣味を楽しむことで、ストレスを軽減することが重要です。深呼吸や瞑想、ヨガなどもストレス管理に効果的です。

サプリメントや漢方薬を試す

精子の質を改善するために、サプリメントや漢方薬を活用するのも一つの方法です。亜鉛やマカ、アルギニン、L-カルニチンなどの栄養素は、精子の形成や運動率の向上に役立つとされています。また、漢方薬では補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や八味地黄丸(はちみじおうがん)などが精子の質を向上させる効果があるとされています。ただし、サプリメントや漢方薬は医師と相談しながら摂取することが推奨されます。

医師の指導のもと、薬物療法や手術を検討する

生活習慣の改善だけでは精子の状態が改善しない場合、医師の指導のもとで薬物療法や手術を検討することも必要です。ホルモン分泌の異常がある場合は、ホルモン補充療法が行われることがあります。また、精索静脈瘤が原因である場合は、手術によって血流を改善し、精子の質を向上させる治療が行われることがあります。専門医と相談し、適切な治療を受けることで妊娠の可能性を高めることができます。

男性不妊に関するよくある質問

男性不妊については、多くの疑問を持つ方がいます。ここでは、精液検査や治療に関するよくある質問について詳しく回答します。

精液検査はどこで受けられる?

精液検査は、不妊治療専門のクリニックや泌尿器科、男性不妊専門外来で受けることができます。最近では、郵送で精液検査ができるキットも販売されており、自宅で手軽に検査を受けることも可能です。ただし、正確な診断を受けるためには、専門の医療機関で精液検査を行うことが推奨されます。

精液検査の結果はすぐに改善する?

精子の状態は、生活習慣の改善や治療によって徐々に変化しますが、結果が出るまでには3か月程度の期間が必要です。これは、精子が作られてから射精されるまでに約3か月かかるためです。生活習慣を見直し、適切な治療を受けることで、徐々に精子の質が向上する可能性があります。

男性不妊の場合、妊娠は諦めるしかない?

男性不妊と診断された場合でも、適切な治療や対策を行うことで、妊娠の可能性を高めることができます。精子の状態が悪くても、人工授精や体外受精、顕微授精などの生殖補助技術を利用することで妊娠が可能になるケースもあります。決して諦める必要はなく、専門医と相談しながら最適な方法を見つけることが大切です。

精液検査の費用はどのくらいかかる?

精液検査の費用は、医療機関や検査項目によって異なりますが、一般的には5000円〜1万円程度が相場です。保険適用外となることが多いため、検査を受ける前に費用について確認しておくことをおすすめします。また、精液検査だけでなく、ホルモン検査や遺伝子検査などを併用する場合は、さらに費用がかかることがあります。

まとめ

男性不妊は、不妊症の原因の約半数を占める重要な問題です。精液検査を受けることで、精子の数や運動率、形態などをチェックし、妊娠の可能性を評価することができます。WHOの基準値を参考にしながら、精子の状態を改善するための生活習慣の見直しや適切な治療を行うことが大切です。

男性不妊の原因は、ホルモンバランスの乱れや精索静脈瘤、感染症、ストレス、生活習慣の影響など多岐にわたります。しかし、生活習慣の改善や医療的な治療によって精子の状態を向上させることが可能です。禁煙や禁酒、ストレス管理、適度な運動、サプリメントの活用などを取り入れながら、妊娠の可能性を高めるための対策を講じましょう。

男性不妊は決して珍しいものではなく、適切な対応をすれば多くのケースで改善が見込めます。パートナーと協力しながら、不妊治療に前向きに取り組むことが大切です。

 

監修 本八幡鍼灸院院長 峯岸里美(鍼灸師歴18年)

2004年3月 鍼灸師国家資格取得
2003年4月 心身健康堂入社
2007年4月 けやきの杜鍼灸接骨院赤坂入社
2008年6月 住吉鍼灸院勤務
2013年2月 本八幡鍼灸院開院