妊娠糖尿病の予防法を解説!糖尿病のリスクを減らしましょう!

妊娠糖尿病とは何か?

妊娠糖尿病とは、「妊娠中にはじめて発見または発症する糖尿病に至っていない糖代謝異常」と定義されています。妊娠前に既に糖尿病と診断されている場合や、妊娠時に診断された明らかな糖尿病は、妊娠糖尿病には含まれません。
ただし、妊娠糖尿病より重度の状態であるため、管理はより厳密に行う必要があります。

妊娠糖尿病による影響は?

妊娠糖尿病になると、お母さんが高血糖の状態となります。
そうすると、お腹の中の赤ちゃんも高血糖となり、様々な合併症を引き起こすリスクが高くなります。


【お母さん側の症状】
・妊娠高血圧症候群・羊水量の異常・肩甲難産・網膜症・腎症およびそれらの悪化・帝王切開の確率上昇など
【赤ちゃん側の症状】
・早期産・流産・胎児死亡・多血症・低血糖・形態異常・巨大児・神経障害など

検査方法

妊娠初期から随時血糖を測り、血糖値が高いときはブドウ糖負荷試験をして診断をしていきます。妊娠初期では血糖値に異常がなかった方でも、妊娠が進むにつれて、血糖値を下げる働きがあるインスリンというホルモンの効果が低下するため、妊娠中期(24週〜28週)に再度スクリーニング検査を行うことが必要です。


スクリーニング検査で陽性が出た場合は、75g糖負荷試験を行い、下記の基準で診断をします。

妊娠糖尿病:75g糖負荷検査において次の基準の1点以上を満たした場合に診断する。
1、空腹時血糖値≧92mg/dL
2、1時間値 ≧180mg/dL
3、2時間値 ≧153mg/dL

糖尿病の家族歴がある方、高齢妊娠、肥満などの方はリスクが高くなるため、必ず検査を受けるようにしましょう。

妊娠中の血糖値の目安は?

妊娠中の血糖値の上昇は、お母さんにも赤ちゃんにも様々な合併症のリスクが高くなるため、健常の妊婦さんと同じ血糖値を目標とします。
現在推奨されている血糖値の目安は、食前血糖値100mg/dL未満、食後1時間血糖値食後1時間血糖値140mg/dL未満、食後2時間血糖値120mg/dL未満です。

この数値を維持していくためには、病院での血糖値検査だけではコントロールが不十分です。血糖自己測定により、日々の生活の中で、血糖値の変動を把握して、それに合わせて治療をしていきましょう。

妊娠糖尿病になる理由

妊娠糖尿病になる原因はさまざまですが、生活習慣や今持っている症状などが原因となってくることが多いです。妊娠糖尿病になってしまう理由を事前に知ることで、予防につなげましょう。

血糖値が下げられない

妊娠をすると、胎盤内でたんぱく分解酵素が作られます。この分解酵素は血糖値を下げる働きのあるインスリンも分解をしてしまう働きがあるため、血糖値が下げられなくなってしまいます。

特に胎盤が完成する16週頃からは、インスリンの分泌量を増やしても血糖値が下がりにくくなるため、妊娠中は誰でも血糖値が上がりやすくなります。
妊娠により、赤ちゃんが成長するためには多くの栄養を必要としますが、現代の食事は糖質を過剰摂取しがちです。これが血糖値の上昇につながり、妊娠糖尿病のリスクを高めます。

食事の乱れ

現代は昔に比べ、欧米食の普及もあり、妊娠前から糖質や脂質を多くとる食生活をしています。特に糖質は、意識しなくても比較的多く摂取しがちな栄養素です。
また、仕事の忙しさや自炊にかかる手間など、丼物やパスタ、うどん、パンなど、手軽に済ませることができる食事は、基本的に糖質が多いものばかりです。

妊娠中はただでさえ血糖値を下げる働きが落ちてしまうにも関わらず、糖質過多の食事をしてしまうと、妊娠糖尿病のリスクが高まります。

運動不足

運動すると筋肉へ血流が上がり、ブドウ糖が細胞の中に取り込まれます。するとインスリンの効果が高まり、血糖値を下げてくれます。
また筋肉を増やすことでもインスリンの効果を高める働きがあります。近年は、テレワークなどの普及により、以前よりも動かない方も増えているかと思います。
また、社会人になると、学生の時とは違い、定期的に運動する習慣がなくなる方も多いです。日常的に運動する習慣がなくなることで、糖の吸収やインスリンの働きが鈍くなってしまいます。

多嚢胞性卵巣症候群

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の50%~80%の方に、インスリン抵抗性があると認められています。

これは、インスリンの作用が十分に発揮されず、血糖値の上昇を抑制できない状態です。
全年代において、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)出ない方と比べると、空腹時の血糖値、インスリン値の値が高いと報告されています。

その他

・妊娠前から肥満(BMI25以上)がある。
・家族に糖尿病の人がいる
・巨大児の分娩歴がある。
・原因不明の流産、早産、死産の経験がある。
・先天奇形児の分娩歴がある。
・35歳以上の高齢出産である。

病院での治療方法

妊娠糖尿病になってしまった場合、病院では食事療法とインスリン療法を行うことが一般的です。実際にどのような内容なのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

食事療法

食事療法は妊娠糖尿病の基本です。食事療法で気を付けるポイントは、
①お母さんにも胎児にも、妊娠を維持するのに必要なエネルギーが供給できること 
②食後の高血糖を起こさないこと 
③空腹時のケトン体産生を亢進させないこと 
です。

妊娠糖尿病と診断されたら、一日に必要な量以上のカロリー摂取は控えたいところです。ですが、妊娠に必要なエネルギーは摂取しなければ赤ちゃんの発育にも関わってきます。
まずは、妊娠中に必要な一日の摂取カロリーを知りましょう!

妊娠中に必要な一日のエネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×身体活動量+付加量(kcal)

上の公式から必要なエネルギー量がわかります。

【標準体重】
標準体重とは、身長から導き出される理想的な体重のことです。

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

【身体活動量】
身体活動量とは、日頃の活動量を数値化したものです。一日中座りっぱなしの方と、一日中動き回る方とでは、一日に消費するエネルギー量が違います。
活動量ごとに数値の目安があるので、自分がどこに当てはまるか確認してみましょう。

活動量の目安
・やや低い(デスクワークが主な方):25~30
・適度(立ち仕事が多い方):30~35
・高い(力仕事が多い方):35~

【付加量】
付加量とは、妊娠中に付加すべき摂取エネルギー量のことです。
妊娠時期により付加量が変わります。今の付加量を確認しましょう。

・妊娠初期(16週未満):+50kcal
・妊娠中期(16週~28週未満):+250kcal
・妊娠後期(28週以降):450kcal

例えば、156cmで仕事はデスクワークの妊娠中期の妊婦さんの場合

53.53(kg)×25+250(kcal)=1588.25(kcal) となります。

まずは自分の必要なエネルギー量を把握して、多過ぎず少な過ぎずを維持していきましょう。

インスリン療法

食事療法でも血糖値の改善が見られない場合は、インスリンを使った治療も行っていきます。

妊娠糖尿病の場合は、胎盤を通して胎児に移行してしまう可能性もあるため、基本的には飲み薬ではなくインスリン注射が選択されます。インスリン注射の代表的なタイプをご紹介します。

①カートリッジタイプ
注射器にインスリン液をセットして、中の液だけを交換することができます。中の液は数日間交換せずに使用することができます。

②使い捨て一体型
注射器とインスリン液が一体となっていて、液の交換ができない使い捨てタイプです。液は数日間使用することができます。

インスリン療法で使う注射器は、一般的な注射器に比べ鍼先が半分ほどの超極細のものを使用します。痛みをそこまで感じることなく使用することができます。

鍼灸での治療方法

鍼灸治療でも、妊娠糖尿病に対する治療を行うことができます。
妊娠糖尿病は、インスリンの働きに影響を与えるため、鍼灸を用いて膵臓の働きを調整し、インスリンの分泌をサポートします。
また食べるのが好きな方は、食事の管理をするのが苦痛になる方も多いです。余計な食欲は自律神経との兼ね合いも大きいので、自律神経を調整することで、余計な食欲を抑え、糖の摂取を防ぎます。

膵臓の働きをアップする

ツボは内臓に刺激を入れられる場所です。治療や自宅のケアでも使えるツボをご紹介します。
【小商】
手の親指の爪の内側。爪の根本あたりにあります。

【隠白】
足の親指の爪の内側。爪の根本あたりにあります。

【章門】
体を正面から見て、肋骨の一番下の際に左右対称にあります。特に左側は、膵臓に位置に近いので効果がより高いです。

 

これらのツボは、膵臓の働きを高める働きがあります。施術でも使っていきますし、自宅のケアとして、朝起きたとき、湯船に浸かっているとき、寝る前など、気づいたときに気持ち良いくらいの力でツボ押しをしてみましょう。

自律神経を整える

食事療法で大変なことの一つが、食べ過ぎないようにすること。特に砂糖や小麦粉などは中毒性が高いため、食べたい欲がなかなか抑えづらいです。
変な食欲が出るのは、自律神経が乱れている証拠でもあります。

鍼は打つだけで自律神経を通常のバランスに戻す働きがあります。また胃に対する治療を行うことでも、余計な食欲を抑える働きがあります。
食事療法より効率よくするために、自律神経の調整をしていきましょう。

自分でできる妊娠血糖病の予防法

病院や鍼灸院で治療する以外にも自分でできるケアもあります。
血糖値は生活習慣が大きく影響します。そのため、週1回通う病院や鍼灸院以上に、日頃の生活が重要だと言っても過言ではありません。専門的な治療と一緒に自分でできることを行っていきましょう。

食事療法

普段の食事の内容を見直すだけでも、血糖値のコントロールはやりやすくなります。食材や栄養素に気を付けながら、血糖値が上がりにくい食生活に変えていきましょう。

【血糖値が上がりやすい食材】
・牛、豚、鳥などのお肉類
・ソーセージ、ハム、ベーコンなどの加工肉
・チョコレートやケーキなど、砂糖を多く含むお菓子類
・ご飯、パン、麺などの炭水化物
・カボチャやジャガイモなどの糖質が多い野菜

【血糖値を下げやすい食材】
・ほうれん草や小松菜などの葉物野菜
・植物性たんぱく質を多く含む大豆類

料理の種類でいうと、和食は血糖値を上げずらい料理です。和食中心の食事に切り替えるところから始めていきましょう。


ですが、食事の管理というのは思っている以上に難しいことが多々あります。また、自分の知識だけでは足りなかったり間違えた認識をしている場合もあります。
医師や栄養士など、専門家のアドバイスを取り入れてみることも大切です。

運動療法

アメリカの大学での研究では、妊娠初期に運動をした妊婦さんは、妊娠糖尿病になるリスクが低いと示されています。
妊娠した2,246名を対象に実験を行い、一日に30分以上の運動をしている女性は、妊娠糖尿病を発症するリスクが半分以下に下がったとされています。
ただし、極端に激しい運動は赤ちゃんに負担がかかったり、お母さん自身が心配になったりすることがあるので、ウォーキングやマタニティヨガなど、ゆったり動けるものが安心です。

体重管理

つわりが終わり、食事がおいしく摂れるようになると体重管理は意識して行う方も多いと思います。妊娠糖尿病には、体重を管理することも効果的です。急激な体重増加が見られる場合、摂取エネルギーが多い可能性があるため、定期的に体重を測定し、妊婦検診の時に確認しましょう。

ただし、体重が少な過ぎるのも好ましくありません。最近の研究では、早産や低出生体重児の原因になることがわかっています。日々の管理で適正な体重を保ちましょう。

出産は普通にできる?

糖尿病を持った妊婦さんでも、お産は基本経腟分娩が適応されます。帝王切開に該当するのは、赤ちゃんの状態やお母さんの状態が悪化し、緊急の出産が必要な場合や、赤ちゃんが大きく経腟分娩が困難だと判断した場合、腎症や網膜症などの糖尿病の合併症が経腟分娩により悪化する危険がある場合となります。


糖尿病を持っている妊婦さんは、一般の妊婦さんと比べて、帝王切開率が2〜4倍ほど高くなります。血糖値の管理や合併症の状態をみながら、医師と相談して安全な出産方法を選択しましょう。

出産後の体の状態は?

産後6〜12週間後に再度ブドウ糖負荷検査を受け、妊娠糖尿病が治っているか確認することが一般的です。妊娠糖尿病の経験がある場合、ない場合に比べて、7倍も糖尿病になる確率が上がります。出産後も定期的に検査をして、体の状態を把握していくことが重要です。

母乳はあげても問題ない?

母乳は飲ませて問題ありません。むしろ赤ちゃんの糖尿病予防にも良いとされています。
インスリンは乳汁に移行しますが、赤ちゃんが飲んでも吸収はされないので、低血糖を起こす心配はありません。

出産後、食事療法だけでは血糖値のコントロールが難しい場合は、インスリン注射を使います。ただし、妊娠中に比べると、出産後の方が血糖値が下がるので、量をそのままに使用してしまうと、お母さんが低血糖状態となってしまいます。
また授乳によっても血糖値は下がるので、数値を確認しながら薬の量は調整していきます。

まとめ

妊娠糖尿病は、お母さんにも赤ちゃんにも大きな負担となる症状です。適切に処置をしたり、生活習慣を見直すことによってコントロールができますが、そうなる前に、今一度自分の生活習慣を見直してみましょう。
食事や運動など、わかっていてもできていないことは結構あるのではないでしょうか?
症状が出てしまってから見直しするのはもちろんのこと、そうならない体づくりをして、楽しく安心してマタニティーライフを送っていただきたいと思います。

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監修 本八幡鍼灸院院長 峯岸里美(鍼灸師歴18年)

2004年3月 鍼灸師国家資格取得
2003年4月 心身健康堂入社
2007年4月 けやきの杜鍼灸接骨院赤坂入社
2008年6月 住吉鍼灸院勤務
2013年2月 本八幡鍼灸院開院